18.4.09

映画「おくりびと」

今日は、ナショナル・ギャラリーに、映画「おくりびと」を観に行ってきました。

水曜日から今日までの3日間、JCE(Japan Care for Elderly)という団体の主催で行われた映画祭の一環です。JCEは、イギリスに日本人のための老人ホームを作ろう、という活動を行っている団体で、この団体に参加している友人が映画祭の情報をいち早く教えてくれたので、チケットを購入することができましたが、どうも早々に売り切れてしまい、チケットを買えなかった人も多くいたようです。

映画「おくりびと」については、オスカーの外国語映画賞を受賞したこともあり、いまさら私が解説する必要もないと思いますが、「納棺師」という職業、映画を観るまで、私もほとんど知らなかったです。

映画のなかで、「昔は家族で行ったこと」という説明が出てきましたが、実は、5年前に父が亡くなったとき、私たちはこの作業のほとんどを家族で行いました。

3か月の入院生活のあと、病院ではもう治療できることがない、ということで、また父本人も、病院生活に疲れ果て、とにかく一日も早く自宅に戻ることを希望していたため、訪問医療の緩和ケアを選びました。

私も日本に帰り、自宅介護が始まった3日目に父は亡くなったのですが、そのときに訪問医療の看護士さんの指導で、私たち家族は父の体を拭き、洋服を着替えさせました。こんなに親密な最後の親孝行を他人の手にゆだねるのではなくて、自分たちで行えたことも含め、この看護士さんとクリニックには、いまでも、感謝の気持ちでいっぱいです。

「おくりびと」の映画を観ながら、納棺師のプロフェッショナルなお仕事に感心すると同時に、いま一度、やっぱりこれは、できることなら他人ではなくて、身内にしてほしい作業なんじゃないかなぁ・・・と、そんな思いを抱かずにはいられませんでした。

8.4.09

映画「Dammed United」とイングランド・サッカーの衰退

映画「Dammed United」を観てきました。
この映画は、60年代後半にイングランドのサッカー・リーグ、
セカンド・ディヴィジョンの最下位群にいたチーム、ダービーを
見事プレミアリーグ昇格、そしてプレミアリーグのトップへと率い、
さらに、70年代にやはり無名チームだったノッティンガムを
2度も欧州杯で優勝するに至らせたブライアン・クロフ監督の成功と、
リーズ・ユナイテッドでの失敗を描いた作品です。

ダービーで大成功を収めるも、マネジメント陣と対立してしまった
クロフは、チームを去らざるを得なくなります。
そこで、次にブライトンからオファーを受けたクロフは言うのです。

「ブライトンは自分の土地じゃない。
自分のチームじゃないのに監督はできない」

この台詞、いまのイングランドのサッカーに
いま一度思い出してほしい、と思ってしまいました。

前回の欧州杯では、思いっきり予選落ちを遂げたイングランド。
この敗退図の後ろ側には、このメンタリティを忘れて、
コマーシャリズムに走り続けた背景があると思うのです。

その昔、サッカーは地元民のものでした。
土地のチームをサポートし、地元のスタジアムに通い、
子どもたちは地元のスター選手を見て、
サッカー選手に憧れて、学校のチームで汗を流していました。

しかし、特にルパード・マードックによるメディア合戦以来、
サッカー、特にプレミアリーグは、
地元民の手の届かないところに行ってしまった。

テレビ観戦しようにも、有料の衛星放送。
スタジアムに行こうと思っても、年間契約の法人席を得たり、
年間数百ポンドを支払っての会員になって初めて、
100ポンドからする入場券が買えるという、商業主義。
庶民からは遠く離れたところに行ってしまったのです。

子どもたちのサッカー離れは進み、
いまではサッカーチームのない小学校も多いと聞きます。
そんななかで、未来の人材が育っていく厚い層が
期待できるはずもありません。

そんな理由から、少なくともこれからの20年も、
イングランドのサッカーがさらなる衰退の道をたどるのは、
悲しいかな、目に見えていると、私は思ってしまうのです。

「Dammed United」がちょっとでも、
失われた庶民のサッカーを思い出させてくれる
カンフルになるといいなぁと願わずにはいられないです。