18.4.09

映画「おくりびと」

今日は、ナショナル・ギャラリーに、映画「おくりびと」を観に行ってきました。

水曜日から今日までの3日間、JCE(Japan Care for Elderly)という団体の主催で行われた映画祭の一環です。JCEは、イギリスに日本人のための老人ホームを作ろう、という活動を行っている団体で、この団体に参加している友人が映画祭の情報をいち早く教えてくれたので、チケットを購入することができましたが、どうも早々に売り切れてしまい、チケットを買えなかった人も多くいたようです。

映画「おくりびと」については、オスカーの外国語映画賞を受賞したこともあり、いまさら私が解説する必要もないと思いますが、「納棺師」という職業、映画を観るまで、私もほとんど知らなかったです。

映画のなかで、「昔は家族で行ったこと」という説明が出てきましたが、実は、5年前に父が亡くなったとき、私たちはこの作業のほとんどを家族で行いました。

3か月の入院生活のあと、病院ではもう治療できることがない、ということで、また父本人も、病院生活に疲れ果て、とにかく一日も早く自宅に戻ることを希望していたため、訪問医療の緩和ケアを選びました。

私も日本に帰り、自宅介護が始まった3日目に父は亡くなったのですが、そのときに訪問医療の看護士さんの指導で、私たち家族は父の体を拭き、洋服を着替えさせました。こんなに親密な最後の親孝行を他人の手にゆだねるのではなくて、自分たちで行えたことも含め、この看護士さんとクリニックには、いまでも、感謝の気持ちでいっぱいです。

「おくりびと」の映画を観ながら、納棺師のプロフェッショナルなお仕事に感心すると同時に、いま一度、やっぱりこれは、できることなら他人ではなくて、身内にしてほしい作業なんじゃないかなぁ・・・と、そんな思いを抱かずにはいられませんでした。

10 件のコメント:

  1. KYOさん、おとうさんをご自分達の手で納棺されたんですね。その時のご家族の様子を想像して、思わず胸が熱くなりました。

    そしてあの日、どうしてもここから出ると言って暴れ、管という管を抜き、わたしが目を離した隙にベッドから降りて、歩けると思ったのにうまくいかなくて、仰向けに倒れて後頭部をしこたま打ち、怒りに燃えた目で天井を睨んでいた父の姿を思い出しました。
    その事があったすぐ後に、父には大量のモルヒネが投与され、それから3日後に亡くなってしまいました。

    どうしてわたしは、あの時、自宅介護を決心できなかったのか。どうしてあんなに病院を嫌っていた父の気持ちに添って、せめて数日でも、父を家に帰らせてやれなかったのか。

    KYOさん、おとうさんはとても嬉しかったと思います。そして御遺体となった時もきっと、魂は部屋の中を漂っていて、皆の手で清めてもらっているご自分の姿、そうしてご家族の温かな想いを、胸を熱くして見ていらっしゃったでしょう。

    父の遺体に寄り添いながら、車の中から見た真冬の夕焼け。まだほのかに温かかった父の頬。

    家族の死は家族の手で受け止める。それがもっと普通のことになったなら、命を学び、尊ぶことができる人が増えるかもしれませんね。

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  2. まうみさん、こんにちはー。

    うちの父の場合も、実際に棺に納めてくれたのは、葬儀屋さんなのですが、その前の準備は家族でやって、葬儀屋さんがくるのを待っていた、という感じです。体を拭いて、着替えさせて、すっきりした状態になってもらって、葬儀屋さんが手を組ませて、手にリボンをかけ、そして棺に納めた、というところですね。

    まうみさんの当時の気持ち、私、ものすごくよくわかります。うちは弟夫婦の尽力によって、ようやく自宅介護にこぎつけたものの、最初の1日で、私と弟は膝と膝を突き合わせて、ホスピスを探そう、って話し合ったんですから。私もロンドンにいずれは帰ってしまうし、弟夫婦も同居していない以上、母ひとりでの介護はまず、無理な相談でした。

    だけど、幸か不幸か、ホスピスを探すまでもなく、まうみさんのところと同じように、その3日後には父は帰らぬ人になってしまったんですよ。だから、本当に結果論なんです。まうみさんだって、きっとあと3日ってわかっていたら、お父さんを自宅に連れ帰っていたことでしょうけれども、そんなことは誰にもわからないし、連れ帰ったところで、うまくいくとは限らない。本当になにもかもたまたまの結果論なんですよね。

    人間ってほんと、無力だなぁと思います。でもその無力さを受け止めて、そのなかでできる限りのことをしていくしかないんですよね。そして、まうみさんはきっと、そのできる限りのことをされたんだと思いますよ。

    確かに家族の死って教えられることが大きいですね。父の死には、本当にいろんなことを教えてもらいました。

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  3. KYOさん、ごめんね。なんかKYOさんの文章読んでるうちに、どどどっとこみ上げてきてしまって、胸の中に詰まってる、でもいつもは忘れていた気持ちを吐き出しちゃった。
    そして、ありがとう!
    なにもかもたまたまの結果論。わたしもそうだと思おうと思います。できる限りのことはした。そう思わないとやってられないものね。

    KYOさんの言葉を読みながら、またポロポロと涙をこぼしてしまいました。嬉しかった。ありがとう。

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  4. まうみさん~。

    いえいえいえ、まうみさんがどばどばっとこみあげてきたものを吐き出せる洗面器のような場所として、機能できたのなら光栄の限りです。人間、はきだすことが大切です。でも大人になると、どこにでも吐き出せないんでね、体に悪いですよね・・・(ちょっと「ししははさんの中国ネタ」とかぶりますね・・・汗)。

    いつも心に洗面器を。
    を座右の銘としていきたいと思います(笑)。

    思うんですけど、きっと過去のことって、ほとんど、大半のことが、置かれた状況のなかでは、それ以上の選択はできなかったってことばっかりだと思うんですよね。だからやっぱり、自分を肯定してあげないと。自分ひとりくらい、自分の味方をしてあげてもバチは当たりませぬ!

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  5. ししはは20/4/09 17:16

    おっしゃる通り。体に辛いものは物質であれ気持ちであれ、ためたら駄目ですよ。体内潔癖性の中国人を見習わにゃ。

    昨年の後半、義母にいよいよそのときが迫ってきたとき、夫は一人日本に長期出張を願い出てお母さんのお世話をしました。彼女の最期の3日間を病院でともに過ごしたのは愛息子だったパパでした。彼は親戚やお姉さん達、父親、みんなから最期を看取ってくれたことを感謝されました。広州に子供と留まり、嫁として最期に何にもできなかったわたしも、パパがしてくれたこと本当にありがたかった。でも、それでも、当事者にしかわからない密度の濃い時間の中で、鉛のように心に食い込む後悔の念があるんですよね。命の期限を告げられた、心を疲弊させる介護の日々。あの日ああなることがわかっているのだったら、こうしてあげればよかった、って。
    でも、後悔は愛していることの証拠ですもん。想われて逝ったひとは幸せなんです。KYOさんもまうみさんも、うちのパパも、親御さんを大事に想って、一生懸命同じときを過ごした、とっても親孝行な人たちです。わたしは心から尊敬しますし、そんなふうに想ってもらえる親御さんをうらやましいな、って思います。

    ちなみに『おくりびと』見たいのはやまやまなんですが、涙腺がすごいことになりそうで、見送っております。(だって、ほら、いまだってだだ漏れ。。。)

    追伸:家族の生死に触れる機会が命を学び尊ぶことに通じる、というまうみさんのご意見には激しく賛成します。そして、わが子供たちもおばあちゃんの死から何かを学んでくれたらと思うのであります。




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  6. ししははさん、こんにちはー。
    コメントありがとうございました。そうそう、体内潔癖症! そのネーミング・・・思わず笑いが。

    ししははさんのご主人も、お母様の最期の一緒に過ごせたラッキーな方なのですね。看取れる幸運っていうんですかね・・・これって国内に住んでいても、したくてもできない人って多いですよね。いろいろ心に重く残る部分もあるかもしれませんけれども、それでも、最期を看取れたご主人も、好運な方だと思います。そして、「想われて逝ったひとは幸せ」・・・本当にそのとおりだと思います・・・。

    「おくりびと」よかったですよ。一緒に行った友人は、ティッシュを使い果たし、私からもティッシュをドネーションしたのですが、帰り際に観たら、革のバッグに水じみが。その日は雨が降っていたので・・・と思いきや。

    「傘、下に置かなかったの?}
    「あ、これ、私の鼻水・・・」

    だそうです。バスタオルをご用意ください。

    ししははさんのところの男の子たちは、ししははさんとご主人の背中を見て育っているんですもの。しっかりと学びながら成長されていくに違いないです。

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  7. ��YOさま

    ご無沙汰しとります。
    今更のコメントで恐縮です。

    いろいろご経験されているから、KYOさんの温かさがこのブログに映し出されれているのだなぁと思いました。

    これからもKYOさんWORLDの発信を楽しみにしています★

    これからパスポート更新に行ってまいります!それでは素敵な一日を。

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  8. はいじさん、こんにちはーー。

    いつも読んでいただき、恐縮です。ありがとうございます!

    いよいよっ、本格的な準備なのですね~! 楽しみにしています♪

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  9. KYOさ~ん、とうとう昨日見ましたよ、『おくりびと』!
    よかった、とってもよかったです。

    『死は門(通過点)に過ぎない』も名言ですが、
    『死ぬ準備ができてないなりゃ人間食べるしかない』も好きだったなぁ。
    義母のことを思い出して、後ろ向きになるのがコワくてずっと見れなかったのですが、なんと前向きでポジティブな映画だったことでしょう!
    生きることに邁進するぞ~って、見た人を鼓舞して送り出してくれる映画でしたね。
    ま、もちろん局所的に泣きはしましたけど。KYOさんのご忠告に従い、ベッドで分厚いタオル装備で見ましたので、ばっちりでした。
    ありがとうございました~

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  10. ししははさん、こんにちはー。

    映画、ご覧になったんですね! DVDですか? はやいですねー。

    死ぬ準備ができてないなりゃ、食べるしかない、は、名言ですね。
    うまいんだ、これが、かなしいけど。
    って。

    印象に残るシーンがいっぱいありましたよね~。
    うちのダンナにも、いつか観てほしいと思っています。

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