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12.2.16

英「ヴォーグ」誌の100年をたどる写真展「Vogue 100」

昨日からナショナル・ポートレート・ギャラリーで開催中の「Vogue 100: A Century of Style」のプレスビューに先日行ってきました。

フィルムあり、スライドあり、盛りだくさんな内容です。

このエキシビションは、英「ヴォーグ」誌に過去100年間に掲載された写真をたどる、というもので、時系列でその変化が分かるように展示されています。

10年ごとに部屋が分かれていて、時系列にたどれるように展示されています。

デイビッド・ベイリーの「トップ・コート」は、60年代の作品。

50年代の作品群。各部屋で展示の仕方も工夫されています。

セシル・ビートン、リー・ミラー、アーヴィング・ペン、スノードン卿から、デイビッド・ベイリー、コリン・デイ、パトリック・デマルシェリエ、ニック・ナイト、ハーブ・リッツ、マリオ・テスティーノ、ティム・ウォーカー、アルバート・ワトソンと、新旧交えてそうそうたる写真家の作品が展示されたエキシビションなのです。

ティム・ウォーカーによるアレキサンダー・マックイーンの大きな写真。
マックイーンといえばこの写真、というくらい有名な一点ですね。

しかも、前述したのは、ほんの一部で、なかにはマン・レイや、ウィリアム・クラインの作品まであり、私のように、特にファッションに関しては門外漢でも、写真に興味のある人には、たまらない写真展だと思います。

ウィリアム・クラインのポジもあり、目が釘づけに。

「ヴォーグ」という雑誌の底力を感じさせる、明らかな「ファッション写真」とは異なる、
魅力ある写真も多かったです。

もちろん、バックナンバーもずらーり。

5月22日まで開催されているそうですので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。混雑が予想されるので、前売り券を購入されることをおすすめします。

Vogue 100: A Century of Style
http://www.npg.org.uk/whatson/vogue/exhibition.php

National Portrait Gallery
St Martin's Place, London WC2H 0HE



28.10.14

ルイスに週末旅行

今月の初旬から、11月上旬にかけて、ブライトン・フォト・ビエンナーレという写真の祭典が、イングランドのサウスイースト地域で開催されています。その一環で、ブライトン近郊のルイスという町で行われた、ピンホールカメラのワークショップに参加してきました。

会場は、町のまんなかの高台にあるルイス城。

1000年近く前に造られた古いお城です。

ワークショップといっても、参加者にそれぞれピンホールカメラが渡され、簡単な説明を受けたら、それぞれ好きなように撮って、係の人に渡して現像してもらう、というもの。

コーヒーの缶に穴を空けてつくられたピンホールカメラ。

手ぶれしないように、しっかりと固定して、穴についたテープをはずし、40〜60秒露光。

というわけで、私と夫も、お城の近くで、なにか撮ってみようと2回ずつチャレンジしました。私が被写体に選んだ場所は、こちらです。

年号が入っているゴミ箱を初めて見たので、おもしろい、と思ったのですが。

そうそううまくいくはずもなく、こんな感じ。

全面心霊写真のような(笑)。右下(横位置)には、うっすらとベンチが見えます。
左下(タテ位置)は、ベンチのバックの石の壁がうっすらと。

夫が撮った左上の写真には、私が写っているはずなのですが、むむむ。よーく目を凝らしてみると……。

たしかに写っているような気もします。手に持っているのはiPhone。

ピンホールカメラは、それはそれで楽しかったのですが、ルイスではそのほかにも、英国で現存する最古の写真スタジオ「リーブス」が保管してきた、ルイスの歴史的な写真を、町のショップ55軒のウィンドウに展示(Stories Seen Through A Glass Plate)していて、その関連のエキシビションもルイス城のミュージアムで行われていました。

今回展示されているのは、1800年代なかばから1900年代なかばくらいまでのものが中心。

ショップのウィンドウの展示は、いずれも、「その場所から撮影したもの」と「その場所を撮影したもの」が中心で、思わず立ち止まって、いまの景色と比較してしまいます。

本屋さんのウィンドウに飾られた写真。

ライトボックスで展示されているので、夜見て歩くのも楽しいです。

ルイスは、いまでもほかにはない独自のお店、アンティークショップ、ギャラリーなどが多く、ただウィンドウショッピングをしているだけでも、楽しい町です。

この時期、英国は11月5日のガイ・フォークス・デー(ボンファイヤー・ナイトとも呼ばれます)に向けて、全国で花火大会や盛大なかがり火が行われるのですが、ルイスはその派手さでも知られています。

というのも、プロテスタントの教会の多いルイス、メアリー一世の時代、宗教弾圧により英国全体で300名近くのプロテスタントの教会関係者が処刑されたそうですが、そのうち17人がルイスの人間だったとのこと。そのため、カソリック教徒による陰謀が失敗したことを祝う「ガイ・フォークス・デー」は、ルイスの人々にとって大きな意味をもつものだった、ということらしいです。

ちょうど通りかかったパブのなかでも、「ボンファイヤー・ソサエティ」の集まりが行われていました。
ルイスにはこのようなボンファイヤー・ソサエティがいくつもあり、活発に活動しているようです。

11月上旬にルイスに行く機会のある方は、ぜひ、ボンファイヤーを見に行くのも一興かもしれません。

最後にひとつ、オマケネタ。ハイストリートの一軒のショップのディスプレイがおもしろかったので。

アクセサリーのお店で、古い写真にイヤリングをつけて、ディスプレイしています。

このあたりまでは、まだいいのですが……。

思わず笑ってしまいました。

ルイスは、ブライトンから電車で15分ほど。ロンドンから直行で1時間ちょっとです。日帰りも可能ですが、できれば一泊してゆっくり散策するのが楽しい場所です。

ブライトン・フォト・ビエンナーレのウェブサイト
http://bpb.org.uk/

リーブス・アーカイブのウェブサイト
http://reevesarchive.co.uk/

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http://www.facebook.com/kresseuropelimited






25.9.14

ロンドン・アート・ブック・フェア

明日からホワイト・チャペル・ギャラリーで開催される「ロンドン・アート・ブック・フェア」に、友人のアーティスト、Kaho Kojimaさんが参加していると聞いて、プレビュー・イブニングにお邪魔してきました。

プレビュー・イブニングなのに、汗だらだらになってしまうほどの大盛況。
人にぶつからずに歩けないほどの人気ぶりです。

1階は出版社のブースがひしめき、Kahoさんを含む個人のアーティストの作品は、2階部分で展示、販売されています。

こちらがKahoさんのテーブル。

クラフト心をそそる美しくて、かわいい作品がいっぱいです。

きれいに布張りされたハンドメイドの飛び出す絵本、トレーシングペパーを重ねていくと、背景が変わっていく絵本など、仕掛けが楽しい希少本ばかりです。

本を開くとこのように。

エンボスされた真っ白な飛び出す絵本が、特に私のお気に入り。

もう在庫がないので、売り物ではない、とのことでしたが、このキッチンの本もすてき。

上の写真の手前にある単語帳のような横長の本は、なんとパラパラまんがなのです。
(パラパラまんがは、こちらのFacebookからどうぞ)

プレビュー・イブニングの今日は、詩人でミュージシャンでもあるアーティストの方のライブもあり。

コードに合わせた「Be Natural, Be Flat, Be Sharp♪」という歌詞が印象的でした。

ロンドン・アート・ブック・フェアは、今週末9月28日までの開催です。
週末、どこに行こうかなぁと考えている、アート好きな方にはおすすめのイベントです。

ロンドン・アート・ブック・フェアのウェブサイト
http://www.whitechapelgallery.org/book-fair/the-london-art-book-fair

Kaho Kojimaさんのウェブサイト
http://kahokojima.com



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18.6.14

CREA 7月号

草間彌生さんの作品が表紙です。

いま、発売中の「CREA 7月号」のアート特集の一部、「ティム・バートンの世界を知る4つのキーワード」という記事を執筆させていただきました。よろしかったらぜひお手に取ってみてください。

アートが身近に感じられる、すてきな1冊です。草間彌生さんの魅力もたっぷり。草間さんといえば、一昨年テイト・モダンで大展覧会が開催されたこともあり、また大手デパートのセルフリッジズが、草間さんとヴィトンのコラボ商品の発売を記念したショーウィンドウを展開したこともあり、ロンドンの一般の人々の間でも知られる存在となったように思います。

セルフリッジズの正面エントランスの頭上にも。

20以上のウィンドウが一斉にこのように。

さて、ティム・バートン監督のアート作品に関する記事を執筆させていただくにあたり、8月3日までプラハで開催中の「The World of Tim Burton」を見学させていただきました。

美術館の前には、大きなB-Boyの人形が。

ティム・バートン監督の内面世界がググッと迫ってくる、見応えたっぷりの展覧会。オープニングでプラハにいらしていた監督とキュレーターのジェニーさんにインタビューさせていただき、さらにもう一歩「ティム・バートンの世界」に足を踏み入れさせていただいた感のある、たいへん興味深く貴重な経験でした。

写真撮影の際には、インタビュー会場のカーテンを使って、「こんなふうに目の前で開けたり閉めたりしてもらえますか?」というフォトグラファーさんからのリクエストに、快く応じてくださった監督。あまりにも勢いよくカーテンをばふばふ開閉したため、眼鏡がぱーんと飛んでしまうハプニングもありました。扉の写真は、そんな監督のサービス精神と、フォトグラファーさんのアイデアのたまもの。ファンの方には、ぜひぜひご覧いただきたいワンショットです。

こちらの展覧会「ティム・バートンの世界」展は、なんと11月に日本にもやってきます。森アーツセンターギャラリーにて11月1日から来年1月4日までの開催。私もぜひ、もう一度足を運んでみたいと思っています。ご興味のある方は、ぜひぜひ、以下のオフィシャルサイトものぞいてみてください。

「ティム・バートンの世界」展・オフィシャルサイト
http://www.tim-burton.jp/




27.5.14

ブルネルさんのトンネル。


テムズの両岸を水底で結ぶテムズ・トンネル。

先週末、テムズ河の水底を走る「テムズ・トンネル」のウォーキングツアーに参加してきました。テムズ・トンネルは、2010年に開通したロンドン・オーバーグラウンドのイースト・ロンドン線の一部で、普段は普通に電車が走っているトンネルです。

それを5月の終わりのバンクホリデー・ウィークエンドの3日間に限り一般公開、ロンドン交通局がツアーを行ったのです。「トンネルを歩いて、なにが楽しいのか」と思われるかもしれませんが、このチケットがまぁ、飛ぶように売れたようです。発売日の午後にウェブサイトをのぞいたときには、10分おきに催行されているツアーのほとんどが「売り切れ」になっていました。

さて、予約当日。「大きなかばんは持ち込めません」「1キロくらい歩くので、歩きやすい靴を」「三脚の持ち込みは禁止」「出発15分前に必着してください」などなど、チケットと一緒に届いたさまざまな注意書きを読みこんで、テムズ・トンネルの南岸の入口となるロザーハイズ(Rotherhithe)駅に到着しました。

なにやらかわいい壁の前に行列ができています。

10分ごとに催行されるこのツアー、私たちの時間が読み上げられると、20人くらいがぞろぞろと駅の中へ。いつもならオイスターカードをタッチするゲートをそのまま通り過ぎ、受付を済ませたら、ゴム手袋を手にはめるように言われました。

こ、こんな、おしゃれな手袋を…。

ロンドンにお住まいの方は、よくご存知かと思いますが、地下鉄はネズミがわさわさ住んでいて、衛生上、トンネルで働く人も、必ずこの手袋を装着するように決められているのだそうです。

地下のプラットフォームに降りると、我々のグループを先導してくれるガイドのニコラさんから、火災の際の避難方法、線路には今日は電気は走っていないけれど、上を歩かないように、などと、意外にも(失礼)ちゃんとした事前注意がありました。

トンネル・ツアーのはじまりはじまり〜。

そして、ところどころで立ち止まって、トンネルの歴史についての興味深いお話が……。

世界初の川底トンネル、ブルネル・テムズ・トンネルとも呼ばれるこのトンネルの工事には、英国の伝説的技術者、イザムバード・キングダム・ブルネルの父マークがチーフ・エンジニアとして、またブルネル本人もアシスタント・エンジニアとして、携わったのだそうです。

1825年に着工、その後、資金を募るためにここで世界で初めての水底晩餐会が行われたり、工事の最中に2度の洪水事故が起きて、死者を出すことになったり、ブルネル本人もようやく一命を取りとめたほどの重傷を負ったりしながら(ブルネル本人は1828年のこの事故をきっかけに工事から離れたそうです)、1843年にようやく開通しました。

テムズ河にかかる橋の渋滞を緩和するための策として、開通したトンネルではありますが、基本的には歩行者のみ、初日には5万人が訪れたほどの人気ぶりで、それぞれのアーチ部分にはお土産物屋が並んでいたそうです。

このアーチのそれぞれにショップがあったのですね。

トンネルの長さは、わずか396メートルとのことですが、1800年代の前半に水底にトンネルを造ることを思いつき、それを実行に移すとは、狂人と天才は紙一重を地でいく人物だったのではないでしょうか。

ツアーは、和気あいあいと、黒いビニールで包まれた赤信号の前で写真を撮ったり、どこまでも続くトンネルのどこまでも似たような写真を何枚も撮ったりしながら、わずか30〜40分ほどのものでした。

ワッピング側から見たトンネル。

ツアーといっても、一本道のトンネルを向こう岸のワッピング駅まで行って、反対側の線路で引き返してくる、というだけの「世界初の水底トンネル」ウォーク、似たような写真をなにが嬉しいのか何枚も撮りながら、和気あいあいと歩きました。ところどころ、往年のレンガがそのまま見られる場所などもあって、皆が一斉にレンガの写真を撮ったり…(笑)。

ツアーの最後には、再びロザーハイズの駅で手袋をはずし、消毒ジェルで手をすり合わせ、駅をあとにしました。

さて、このロザーハイズの駅からテムズ河に向かって数十秒のところに、このトンネル工事の基地の跡地「ブルネル・ミュージアム」があります。

ブルネル・ミュージアム。かわいらしい外観です。

なかには、トンネル工事の流れを説明するパネルなどが展示されているほか、ビデオの上映、オリジナルグッズの販売などをしています。

このブルネル・ミュージアムの前にあるちょっとした公園のベンチがすてきでした。

橋のかたちをしたベンチ。

鉄道橋を模したベンチ。

近づいてみるとそれぞれに顔がついています。

なかなかおもしろいバンクホリデーの週末となりました。


16.4.14

白と黒のクロアチア

5年ほど前に、日本でちょっとしたブームがあって、たくさんのパッケージツアーが出回ったことや、直行便はないけれど、某航空会社が欧州の航空会社とのコードシェア便を熱心にプロモーションしているのか、多くの日本語ガイドブックが刊行されていることを、まったく知らなかったのです、私。

だから、市内バスの前の座席に、たまたま20代の今風のふたりの日本人女子が座って、手にしていた「カワイイものいっぱい♡」な感じのガイドブックシリーズの「クロアチア」と書かれた表紙が、座席と座席の隙間から見えたときには、度肝を抜かれました。

私にとってのクロアチアのイメージは、まずは記憶にまだ生々しい紛争の舞台となった国であること、アドリア海の美しい風景、世界遺産がたくさんあること、という感じだったので、「カワイイものみーっっけ♡」なガイドブックと旅行者にちょっと違和感を感じたのですね。それと、パリや北欧ならまだしも、どこもかしこも「カワイイもの♡」でぶった切る文化に、軽い嫌悪感を覚えたのも本当のところです。

そんなわけで、前置きが長くなりましたが、4月の頭に休暇をいただいてクロアチアに行ってきました。拙ブログでは「カワイイ」クロアチアに対抗して、全編モノクロ写真でお送りしたいと思います(笑)。

まずは、ロンドンから「アドリア海の真珠」と呼ばれる、壁に囲まれた街ドゥブロヴニクに飛びました。

ケーブルカーで山の上まで行って、そこから撮った風景。
この日はけぶってましたが、壁に囲まれているのがわかるでしょうか。

モノクロの写真からはまったくわからないと思いますが(笑)、オレンジ色の屋根がぎゅうぎゅうと詰め込まれた感じの、かわいらしい街です。現在ではすっかり再建されていますが、91年のユーゴスラビア崩壊にともなう紛争の際には、街は半壊し、いまでも、東側の入口にあたるプロチェ門の脇には、どの部分が破壊されたのかがわかる地図が掲げられています。街を取り囲む城壁は、約2キロ。壁の上をぐるりと一周歩くことができます。

ドゥブロヴニクはトリエステポルト同様、私好みの洗濯物のはためく階段だらけの街で、どこを歩いても心躍る風景に出会うことができます。

こういう坂道がいっぱいなのです。

いろんなところから、こんにちは。

あっちこっちで、リラックスした様子のネコたち。

ドゥブロヴニクは美しい街ですが、クロアチア一物価が高いことでも知られているそうです。なんと、クロアチアのほかの街に比べると、その物価は、1.5倍とも2倍とも言われているとのこと。レストランでの食事も、相場はロンドンと同じくらいか、またはちょっと高いかくらいの印象でした。

さて、そんな美しくも高いドゥブロヴニクで3泊したあと、南西に向かう長距離バスに乗り込み、クロアチア第2の都市スプリットを目指しました。

ドゥブロヴニクからスプリットまでは、バスで4時間半。ドゥブロヴニクやスプリットのあるアドリア海に添って南側に延びるダルマチア地方は、一ヵ所ボスニアに分断されていて、たった8キロのボスニア領をはさんで、バスは2度、国境越えをしなければいけません。道路上に青い小屋の並ぶ、まるで高速道路の入口のような関所があり、ここで、バスのなかにボスニアの警察官が入ってきて、乗客全員のパスポートをチェックします。そして、8キロ先の国境で、再度、同様にパスポート・チェックが行われるのです。

スプリットから、フェリーに乗って40分、アドリア海に浮かぶブラチという島に向かいました。ロンドンで近所に住んでいて仲良くしていた友人夫婦が、5年ほど前に、このブラチに移住したのです。フェリーを下りると、彼らがすでに待っていてくれて、かつて北ロンドンでしたのと同じように、お料理上手な彼女の食事を囲んで、夜遅くまで喋ったり歌を歌ったり(笑)、昼間は海沿いをいつまでもだらだらと散歩したり、のんびり楽しい3日間を過ごしました。

この写真からはまったくわからないと思いますが(笑)、アドリア海の海の色は深い深い青でした。

シーズンオフということもあり、ドゥブロヴニクとはまったく違って、観光客はまだ皆無。村の人々は全員、互いに知っているという空気があり、久しぶりに自分が外国人であることを意識しました。なんというか、本当に久しぶりに、人から見られている、という感じがするのです。同じ外国人として生活していても、ロンドンでは感じたことのない感覚です。

これが、田舎の島だからなのか、はたまた旧社会主義国のもつなにか、なのか、それは私にはよくわかりません。でも、友人カップルがこの島に家を買って改装しているときにあった、こんなエピソードを話してくれました。

彼らが家を買ったのは、まだクロアチアがEUに加盟する前の5年ほど前のこと。いまよりもずっと購入の手続きは複雑だったそうなのですが、ようやく所有者としての手続きを終え、地元のビルダーさんにお願いして、家の改装を始めたそうです。改装というと聞こえはよいですが、はっきり言って、これは遺跡と言った方がよいのでは、というような状態の「家」で、壁も天井も屋根もやり直さないといけないような大がかりなものです。所有権を得てから、ほぼ2年間、彼らはロンドンから時々やって来ては、進捗状況を確認する日々だったとのこと。

さて、この大がかりな改装工事、前述のように村では誰もが知っている地元のビルダーさんが仕切って、必要に応じて彼が人を雇って、作業を進めました。あるとき、友人夫婦がたまたまロンドンから様子を見に来ているときに、ふたり組の警察官が家にやって来て、「この家の所有者はあなたたちか?」と言う。ふたりが「そうだ」と答えると、「この紙に、あなたたちの名前と住所と、あなたたちの父親の名前と住所を書きなさい」と書類を突き出されたそうです。

改装作業をしていたビルダーのひとりが裏の窓から逃げてしまったのは、友人夫婦が意味もわからず、自分とそれぞれのお父さん(!)の名前と住所を書いている間のことでした。逃げ去ったのは、ボスニア人の不法労働者です。

これがどういうことか、というと、どうも近所の誰かが、この家の改装工事を観察しているうちに、ここでボスニア人が働いているらしい、と警察に通報した、という顛末のようなのです。「誰もが互いを知っている」この村の、しかも目の届く範囲の隣人が、です。人の心にすり込まれた、社会主義のメンタリティは、早々簡単に変わるものではない、ということなのでしょうか。

閑話休題。

ブラチ島には、美しいビーチと港がたくさんあり、3日間ではとてもとてもすべてを見て回ることはできず、再訪を誓いました。

ブラチ島のミルナという港の村で。
ここに来るまでのバスの旅は、めまいがするほど美しい風景の連続でした。

海の底にウニがゴロゴロと…!

最終日は、スプリットの空港にほど近い、やはり壁に囲まれた小さな島、トロギールに1泊しました。ガイドブックを見て、トロギールにはぜひ行ってみたかったので、「よしっ、観光するぞ!」と腕まくりしたのも束の間、あっちもこっちも観光名所の扉は固く閉ざされています。なんと、このシーズンは、大聖堂以外のすべての観光名所は、朝の3時間しかオープンしていないそうです(ショック)。またしても再訪決定です。

大聖堂の鐘楼から見たトロギール。

カトリックとセルビア正教会とイスラム教と、複雑な歴史のなかで奪ったり奪われたりの繰り返しをくぐり抜けてきたクロアチア。難解でありながら、美しいカリグラフィを読み解くような深遠なおもしろさのあるところ。時間をかけて、何度も訪れて、少しずつ仲良くなっていきたい、そんな場所です。

トロギールの大聖堂で。