24.11.13

一保堂茶舗の日本茶マスタークラス


会場となったソザイ料理教室。

京都のお茶屋さん一保堂茶舗による、「日本茶マスタークラス」に参加してきました。

私が参加したのは、「プレミアム・フレキシブル・クラス」で、さまざまな種類の日本茶について、総合的に教えてくれる、というクラスでした。

いままで、紅茶の雑誌の企画などに関わった経験から、紅茶のマスタークラスには参加したことがありましたが、日本茶についてちゃんと教えてもらうのは初めてのこと。わくわくしながら、会場であるソザイ料理教室に向かいました。

受講者ひとりひとりの前にお茶のセットと資料が並べられています。

クラスでは、スライドを使いながら、茶葉の栽培法の違いがお茶の味にどのような影響を与えるか、抹茶、玉露、煎茶、番茶の違いなどの説明があり、また、一保堂茶舗さんが扱っているお茶を使って、種類別のおいしいお茶のいれ方の実演がありました。

茶畑には、屋根のある「覆下園」と屋根のない「露天園」があるという解説スライド。

生まれて初めて、お抹茶をたてることにも挑戦しました。

まずはカリカリと茶こしを使って、抹茶をふんわりサラサラのパウダー状に。

長くかき混ぜすぎると渋みが出たり、フォーム状にしない「泡なし抹茶」など、たて方によって、味が変わるのも驚きでした。

Wの字を書くように勢いよくバシャバシャ10秒、
表面をサラサラなでること5秒が基本だそうです。

一保堂茶舗さんで扱っている最高級の玉露の第一煎は、お茶というよりは、まるでお出汁! うまみをそのままいただいている感じです。茶かすと呼ぶには申し訳ないような、急須に残った茶葉も、そのまま食べられるくらいおいしかったです。まるで野菜のようでした。

この日のためにSoレストランのパティシエの方が、特別にこしらえたというお菓子の数々も美味でした♡

玉露、煎茶、番茶とそれぞれ、適切なお湯の温度と抽出時間が異なることとか、お茶を湯飲みにいれる際に、急須を揺すってはいけないこととか、知らないことばかりで、とても勉強になりました。

お馴染みの包装紙に包まれたお茶や道具の販売もありました。

一保堂茶舗さんのお茶は、基本的にどの種類も三煎まではおいしくいただけるとのこと。私もほうじ茶と煎茶を購入して、教えていただいた「正しいいれ方」を遵守して、ここ数日はおいしい日本茶ライフを満喫しています。


講師の方が身に着けた、お茶の色のエプロン。もう一種類グリーンのエプロンもあるそうです。

<ソザイ料理教室>
https://www.sozai.co.uk

<一保堂茶舗>
http://www.ippodo-tea.co.jp
※一保堂茶舗さんのウェブサイトには、かわいらしいイラスト付きで、お茶の淹れ方も解説されています。ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。



10.11.13

白いポピー

こんな白いポピーがあるのをご存知でしょうか。

11月11日の英霊記念日に向けて、ロンドンの街にポピーの花が溢れるこの時期は、毎年自然と戦争について考えてしまう、英国にとって、日本の8月初旬のような季節です。
(ポピーの花と英霊記念日との関連については、一昨年のこちらのポストをご参考までに)

振り返ってみると、去年一昨年も戦争に関することをブログに書いていました。

先日、スタンステッド空港で小銭をポピーアピールの募金箱に寄付したら、「ぜひポピーを持っていってください」と言われました。「いえいえ、けっこうです」と言ったのですが、典型的な英国人紳士(に見えるこの男性)、「I insist...(まぁ、そうは言わずに…みたいなニュアンス)」とこれまた典型的な英国的受け答え。ありがたくひとつ受け取って、胸につけました。

私は戦争で傷ついたり亡くなったりした、すべての方に対して心から同情はしますし、痛ましい気持ちにはなりますが、第二次大戦では敵国であった日本から来た私が、英霊記念日に向けて赤いポピーの花を胸につけるのは、どうなんだろう、という複雑このうえない思いがあり、いままで募金はしても胸にポピーをつけたことはありませんでした。

そんな話を、11月第2日曜日、英霊記念の式典が行われる日曜日の今朝、夫にしたところ、「英国人のなかにも、そういう人はけっこういて、白いポピーを胸につけている人がいるよ」と言うのです。

そこで、さっそくネットで調べてみたところ、白いポピー・キャンペーンは、戦争で命を落とした英国兵、さらに自国、敵国をわけず、戦争で命を奪われたすべての市民に対する哀悼の思いと、明確な「反戦支持」を意味し、1933年に始まったものだそうです。英国の非政府組織の反戦団体である「Peace Pledge Union」が運営しています。

Peace Pledge Unionのウェブサイトを見ていたら、白いポピーのリースを記念碑に手向ける式典が正午からタビストック・スクエアで行われたとのことだったので、ちょっと見に行ってきました。

ラッセル・スクエアの北側にある公園です。

私が到着したときには、すっかり式典も終わって、人もまばらな静かな公園でしたが、式典の名残はちゃんと残っていました。

戦争で戦った人、ではなく、戦わないことを選んだ人々を讃える石碑の下に、白いポピーのリースが置かれています。

石碑には、「TO ALL THOSE WHO HAVE ESTABLISHED AND ARE MAINTAINING THE RIGHT TO REFUSE TO KILL」とあり、「Conscientious Objectors」を讃えるもののようです。「Conscientious Objectors」は、日本語にすると「良心的兵役拒否者」と、あまり聞き慣れない言葉ですが、Wikipediaによると「良心的兵役拒否」の項で、以下のような説明がなされています。

「国家組織の暴力、とりわけあらゆる形態ないしは特定の状況下の戦争に参加することや義務兵役されることを望まないこと。当人の良心に基づく信念であり、拒否した者を良心的兵役拒否者 (conscientious objectors, CO's) という」

もちろん、英国でも大戦中に召集を受けたら拒否することは許されなかったわけで、徴兵されることよりも投獄されることを選んだ人々、ということになります。

反戦をうたう、メッセージがリースの中央に。

余談ではありますが、同じタビストック・スクエアには、こんな記念樹もありました。

広島の原爆で犠牲になった人々に捧げる記念樹だそうです。

多分に理想論が入っていることは承知の上で、白いポピー、気になる存在です。


一方、こちらは、通常の赤いポピー。こちらも今日はいろんなところで、記念碑にリースが手向けられる式典が行われたようです。

ユーストンの駅前。

よーく見ると、前列右側は、元国会議員でジャーナリスト、鉄道番組に出演している
マイケル・ポーチェロさんが、戦死を遂げた鉄道員たちに捧げたものでした。

赤いポピーのリースを抱えて、式典の準備を急ぐ、ハイゲイトの牧師さん。

白も赤も、ポピーにあふれた11月第2日曜日のロンドンでした。

2.11.13

おすすめしたい私の好きなふたつのこと(もの)②


読書中はついついカバーを脱がしてしまう私です(同じ写真でスミマセン)。

さて、急にふたつに分けることに決めた、「おすすめしたい私の好きなふたつのこと(もの)」②は、ミュージシャンであり詩人のパティ・スミスさんの「ジャスト・キッズ」という本です。

この本がうちのポストに届いたのは、今年のはじめのことでした。以前にお仕事で、何度かご一緒した、お友だちのライター兼翻訳者の小林薫さんが、ご自身の訳書が出版されたから、ということで、わざわざ日本から送ってくださったのです。

今年前半は、私も仕事が忙しく、落ち着いて本を読む間もなく、時が過ぎてしまったのですが、秋になってようやくまとまった時間ができて、読み始めたが最後、もう夢中で最後まで読んでしまいました。

この本は、パティ・スミスが、1989年に41歳の若さで亡くなった写真家ロバート・メイプルソープと過ごした20年間を綴ったものです。1967年、まだなにものでもなかった20歳のパティ・スミスが、スーツケースひとつでNYに出てきて、ホームレス生活を送っているところに出会ったのが、こちらもまだ、なにものでもなかったロバート・メイプルソープだったのです。

ふたりは恋人であり、兄弟のようであり、同士であり、そしてロバート最期の日まで絶対的な親友だったことが、この本からうかがえます。アートに悩み、自分のアイデンティティやセクシャリティに悩み、壁に爪を立てるようにもがく彼らの周りには、ウォーホールや先日亡くなったルー・リード率いるヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジャップリン、ウィリアム・バロウズ、ジム・キャロルといったそうそうたるビートニクの主要メンバーがいました。

当時まだなにものでもなかった人々と、すでに世に名前を馳せていた人々、道半ばで命を落とした人、いまもそれぞれの業界を牽引している人、そんな数々の名前が交差して、人間関係をかたちづくり、離れ、戻り、必死に自己表現の道を探す様子が、とても興味深く描かれています。

そしてなんといっても、パティ・スミスのポエティックな表現が、ただでさえ興味がつきない当時の人間関係を、さらにリリカルにひもといていくのです。

そんな文章の魅力をあますことなく訳文で表現した、小林薫さんと共訳者である、にむらじゅんこさんには、心からの敬意を表したい気持ちです。

秋の夜長、ちょうど読書のシーズンです。
よろしかったら、ぜひお手にとってみてください。

「ジャスト・キッズ」(河出書房新社刊)2380円(税別)
パティ・スミス著 にむらじゅんこ/小林薫 訳

秋の夜長にぜひ。


おすすめしたい私の好きなふたつのこと(もの)①

左が、私がはじめて行ったバーミンガム市響のコンサートのプログラムです。

今回は、ちょっとおすすめしたいふたつのこと(もの)について、書きます。

まずひとつめ。
クラシック音楽ファンの方でなくとも、おそらく英国人指揮者、サイモン・ラトルの名前は聞いたことがあると思います。そうです、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の主席指揮者兼芸術監督のサイモン・ラトルです。

それでは、サイモン・ラトルがベルリンに行く前に18年間(!)にわたって率いてきた「バーミンガム市交響楽団」(CBSO)の名前は、聞いたことがあるでしょうか。

バーミンガムは英国第二の都市でありながら、なんとなくパッとしないというか、ちょっとイメージの暗い工業地域、という印象が英国人の間にはあると思います。バーミンガム出身のうちの夫は、「バーミンガム出身と言うだけで、人々のなかで自分の推定知能指数が10下がる」と、英国人的な自虐ネタを放ったりしていますが、その実、バーミンガムというのはロイヤルバレエがあったり、立派なアートギャラリーがあったり、9月には1億8900万ポンドを費やした美しい図書館が完成したり、特に最近は文化的な一面も注目に値する場所なのです。

そのなかで、私が心からサポートしているのが、前述のバーミンガム市響です。初めて彼らの音楽を聴いたのは、2009年12月のこと。ロシア人ピアニスト、ニコライ・ルガンスキーをソリストに迎えてのラフマニノフのピアノ協奏曲3番をはじめとする演目でした。たまたま一列目の席しかとれなくて、舞台かぶりつき、みたいな位置だったので、指揮者や演奏者の息づかいまで聞こえてくる、またその躍動感がものすごく気持ちがよくて、ちょっと夢のような時間を過ごしてしまい、たちまちファンになってしまったのでした。

バーミンガム市響が拠点としている、シンフォニー・ホール。

バーミンガム市響の芸術監督、アンドリス・ネルソンスさんの指揮は、オケとの対話が客席にも感じられて、コンサートは聴衆も含めて完成されるものなんだなぁと、改めて思わせるものがあります。専門的なことはよくわかりませんが、私にとっては、とにかく心地のよい音楽時間を過ごせるのが、バーミンガム市響なのです。

バーミンガム市響の芸術監督アンドリス・ネルソンスさん(©Marco Borggreve)。

そんな彼ら、実は今月、来日予定で、東京(オペラシティ)4公演、西宮と北九州で1公演ずつ、合計6公演を行うそうです。

11月18日と19日の東京での公演は、こちらのリンクから。
お友だちの音楽ライター、後藤菜穂子さんがネルソンスさんにインタビューされた記事はこちらのリンクからご覧になれます。

よろしかったら、ぜひ会場に足を運んでみてください。

本当は、好きなもの、ふたつまとめて書こうと思いましたが、別々の記事にすることに、いま(!)決めました。