18.6.14

CREA 7月号

草間彌生さんの作品が表紙です。

いま、発売中の「CREA 7月号」のアート特集の一部、「ティム・バートンの世界を知る4つのキーワード」という記事を執筆させていただきました。よろしかったらぜひお手に取ってみてください。

アートが身近に感じられる、すてきな1冊です。草間彌生さんの魅力もたっぷり。草間さんといえば、一昨年テイト・モダンで大展覧会が開催されたこともあり、また大手デパートのセルフリッジズが、草間さんとヴィトンのコラボ商品の発売を記念したショーウィンドウを展開したこともあり、ロンドンの一般の人々の間でも知られる存在となったように思います。

セルフリッジズの正面エントランスの頭上にも。

20以上のウィンドウが一斉にこのように。

さて、ティム・バートン監督のアート作品に関する記事を執筆させていただくにあたり、8月3日までプラハで開催中の「The World of Tim Burton」を見学させていただきました。

美術館の前には、大きなB-Boyの人形が。

ティム・バートン監督の内面世界がググッと迫ってくる、見応えたっぷりの展覧会。オープニングでプラハにいらしていた監督とキュレーターのジェニーさんにインタビューさせていただき、さらにもう一歩「ティム・バートンの世界」に足を踏み入れさせていただいた感のある、たいへん興味深く貴重な経験でした。

写真撮影の際には、インタビュー会場のカーテンを使って、「こんなふうに目の前で開けたり閉めたりしてもらえますか?」というフォトグラファーさんからのリクエストに、快く応じてくださった監督。あまりにも勢いよくカーテンをばふばふ開閉したため、眼鏡がぱーんと飛んでしまうハプニングもありました。扉の写真は、そんな監督のサービス精神と、フォトグラファーさんのアイデアのたまもの。ファンの方には、ぜひぜひご覧いただきたいワンショットです。

こちらの展覧会「ティム・バートンの世界」展は、なんと11月に日本にもやってきます。森アーツセンターギャラリーにて11月1日から来年1月4日までの開催。私もぜひ、もう一度足を運んでみたいと思っています。ご興味のある方は、ぜひぜひ、以下のオフィシャルサイトものぞいてみてください。

「ティム・バートンの世界」展・オフィシャルサイト
http://www.tim-burton.jp/




16.6.14

気になる。

つい先月まで、「秋秋秋冬雨秋冬」みたいなお天気が続いていたロンドンですが、ようやく「雨夏夏雨雨夏夏」といったルーティンに変化してきました。

今年も畑仕事をしていますが、冬にキリッと寒くならなかったせいか、ナメクジがあまりに元気で、植えても植えても翌週にはあとかたもなく、まるで夢を見ていたのかしら、と思うくらい、なにもなくなっています。

かぼちゃも、きゅうりも、ズッキーニも、苗を植えた翌日には、小さな茎の残骸が地面から1センチ位残っているだけで、みる影もなし。苗をいかにプロテクトするか、こうなったらこちらも、奴らと知恵比べです。

私がお借りしている畑は、オーガニックの規定があり、化学的なものを使用してはいけない決まりになっています。そこで、卵の殻をまいたり、使用済みのコーヒーかすをまいたり(ナメクジ的にはお腹にくっつくのが嫌みたいです)、不織布でカバーしたり、半分に切ったペットボトルでカバーしたり、考えうる限りのあらゆる手段を駆使しています。それでも、今年はレタスやキャベツや水菜など、葉ものは全滅です。

さて、そんななかで、去年「いっぱいつくろう」と心に決めて、冬にまいたそら豆がようやく収穫期となりました。レジ袋いっぱいの豆をもってきて、テレビから流れるW杯の中継を横目で見つつ、ひとつひとつ豆をふかふかのベッドから取り外す作業は、これ、なんとも平和で幸せです。

レジ袋いっぱいだったはずなのに……これっぽっちに。

やっぱりそら豆って、絵になるなぁと。W杯よりも写真を撮ることに盛り上がり…だって、ちょっと気になる……。

ほらほらほら。

気になる。気になる。

ほらほらほらほら。

気になる。気になる。気になる。

サービスショットのヨコ位置。

いまさらですが、試合の後で交換できるシャツがない(核実験に伴う米欧からの経済制裁の影響で)、という、不遇のイラン選手たち、がんばれ。あと10分。

27.5.14

ブルネルさんのトンネル。


テムズの両岸を水底で結ぶテムズ・トンネル。

先週末、テムズ河の水底を走る「テムズ・トンネル」のウォーキングツアーに参加してきました。テムズ・トンネルは、2010年に開通したロンドン・オーバーグラウンドのイースト・ロンドン線の一部で、普段は普通に電車が走っているトンネルです。

それを5月の終わりのバンクホリデー・ウィークエンドの3日間に限り一般公開、ロンドン交通局がツアーを行ったのです。「トンネルを歩いて、なにが楽しいのか」と思われるかもしれませんが、このチケットがまぁ、飛ぶように売れたようです。発売日の午後にウェブサイトをのぞいたときには、10分おきに催行されているツアーのほとんどが「売り切れ」になっていました。

さて、予約当日。「大きなかばんは持ち込めません」「1キロくらい歩くので、歩きやすい靴を」「三脚の持ち込みは禁止」「出発15分前に必着してください」などなど、チケットと一緒に届いたさまざまな注意書きを読みこんで、テムズ・トンネルの南岸の入口となるロザーハイズ(Rotherhithe)駅に到着しました。

なにやらかわいい壁の前に行列ができています。

10分ごとに催行されるこのツアー、私たちの時間が読み上げられると、20人くらいがぞろぞろと駅の中へ。いつもならオイスターカードをタッチするゲートをそのまま通り過ぎ、受付を済ませたら、ゴム手袋を手にはめるように言われました。

こ、こんな、おしゃれな手袋を…。

ロンドンにお住まいの方は、よくご存知かと思いますが、地下鉄はネズミがわさわさ住んでいて、衛生上、トンネルで働く人も、必ずこの手袋を装着するように決められているのだそうです。

地下のプラットフォームに降りると、我々のグループを先導してくれるガイドのニコラさんから、火災の際の避難方法、線路には今日は電気は走っていないけれど、上を歩かないように、などと、意外にも(失礼)ちゃんとした事前注意がありました。

トンネル・ツアーのはじまりはじまり〜。

そして、ところどころで立ち止まって、トンネルの歴史についての興味深いお話が……。

世界初の川底トンネル、ブルネル・テムズ・トンネルとも呼ばれるこのトンネルの工事には、英国の伝説的技術者、イザムバード・キングダム・ブルネルの父マークがチーフ・エンジニアとして、またブルネル本人もアシスタント・エンジニアとして、携わったのだそうです。

1825年に着工、その後、資金を募るためにここで世界で初めての水底晩餐会が行われたり、工事の最中に2度の洪水事故が起きて、死者を出すことになったり、ブルネル本人もようやく一命を取りとめたほどの重傷を負ったりしながら(ブルネル本人は1828年のこの事故をきっかけに工事から離れたそうです)、1843年にようやく開通しました。

テムズ河にかかる橋の渋滞を緩和するための策として、開通したトンネルではありますが、基本的には歩行者のみ、初日には5万人が訪れたほどの人気ぶりで、それぞれのアーチ部分にはお土産物屋が並んでいたそうです。

このアーチのそれぞれにショップがあったのですね。

トンネルの長さは、わずか396メートルとのことですが、1800年代の前半に水底にトンネルを造ることを思いつき、それを実行に移すとは、狂人と天才は紙一重を地でいく人物だったのではないでしょうか。

ツアーは、和気あいあいと、黒いビニールで包まれた赤信号の前で写真を撮ったり、どこまでも続くトンネルのどこまでも似たような写真を何枚も撮ったりしながら、わずか30〜40分ほどのものでした。

ワッピング側から見たトンネル。

ツアーといっても、一本道のトンネルを向こう岸のワッピング駅まで行って、反対側の線路で引き返してくる、というだけの「世界初の水底トンネル」ウォーク、似たような写真をなにが嬉しいのか何枚も撮りながら、和気あいあいと歩きました。ところどころ、往年のレンガがそのまま見られる場所などもあって、皆が一斉にレンガの写真を撮ったり…(笑)。

ツアーの最後には、再びロザーハイズの駅で手袋をはずし、消毒ジェルで手をすり合わせ、駅をあとにしました。

さて、このロザーハイズの駅からテムズ河に向かって数十秒のところに、このトンネル工事の基地の跡地「ブルネル・ミュージアム」があります。

ブルネル・ミュージアム。かわいらしい外観です。

なかには、トンネル工事の流れを説明するパネルなどが展示されているほか、ビデオの上映、オリジナルグッズの販売などをしています。

このブルネル・ミュージアムの前にあるちょっとした公園のベンチがすてきでした。

橋のかたちをしたベンチ。

鉄道橋を模したベンチ。

近づいてみるとそれぞれに顔がついています。

なかなかおもしろいバンクホリデーの週末となりました。


22.5.14

時計が戻ってきた。(その2)


無事帰宅。

一般的な価値とは無関係に、なんらかの思い出のある品物など、自分だけにとっての価値を英語では「センチメンタル・バリュー」ということがあります。

以前にも書いたことがありましたが、ここ20年以上身に着けている腕時計は、私にとっては、まさにセンチメンタル・バリューのある愛用品。

この時計が手首から消えていることに気づいたのは、1週間のスコットランド出張の帰り道、飛行機がエディンバラから離陸しようとしている、そのときでした。

いったい、どこにいってしまったのだろう、とグルグル頭のなかで考えて、それほど時間もかからずすぐに、空港のセキュリティゾーンで時計を外してトレーにいれた記憶がピコーンと頭によみがえってきました。そしてそれを手首に戻した記憶がないことも。

あああ、どうしよう、と気づいたときには、すでに飛行機は滑走路を滑り出していました。時計を空港に置き去りにして、自分だけロンドンに帰るという状況は、なんともいえずいやーなもので、たぶんもう、あの時計は戻ってこないだろうなぁと、えらく感傷的になって落ち込んだ帰路でした。

さて、ロンドンに戻ってきてすぐに、とりあえず、エディンバラ空港の遺失物担当の窓口に、メールを送りました。前回ブログに載せたときに撮った写真があったので、それも添付して、セキュリティゾーンに置き忘れたことを書いたら、わずか数時間のうちに、「見つかりました」のお知らせとリファレンス番号が。

その後、遺失物担当の方が、私のメールアドレスを間違えたりというハプニングもあり、思ったよりもちょっと時間がかかりましたが、今朝、10日ぶりに私の手元に時計が戻ってきました。

この10日間のあいだに、日本で仕事をしていたときに大変お世話になった方の訃報を聞き、たまたまなのですが、その方がこれと同じ時計をしていたことをぼんやりと思い出しました(その方がされていたのは紳士用でしたが)。

センチメンタルバリューというのは、こうやって静かに雪が積もるみたいに重なって、いつか自分だけにわかる(自分だけにしかわからない)特別な意味をこしらえてしまうものなのかもしれません。


ホテルの窓からは、エディンバラ城が見えました。

羊の出産シーズンだけに、シェットランドでは飛び回る子羊と母さん羊の姿がいっぱいでした。







16.4.14

白と黒のクロアチア

5年ほど前に、日本でちょっとしたブームがあって、たくさんのパッケージツアーが出回ったことや、直行便はないけれど、某航空会社が欧州の航空会社とのコードシェア便を熱心にプロモーションしているのか、多くの日本語ガイドブックが刊行されていることを、まったく知らなかったのです、私。

だから、市内バスの前の座席に、たまたま20代の今風のふたりの日本人女子が座って、手にしていた「カワイイものいっぱい♡」な感じのガイドブックシリーズの「クロアチア」と書かれた表紙が、座席と座席の隙間から見えたときには、度肝を抜かれました。

私にとってのクロアチアのイメージは、まずは記憶にまだ生々しい紛争の舞台となった国であること、アドリア海の美しい風景、世界遺産がたくさんあること、という感じだったので、「カワイイものみーっっけ♡」なガイドブックと旅行者にちょっと違和感を感じたのですね。それと、パリや北欧ならまだしも、どこもかしこも「カワイイもの♡」でぶった切る文化に、軽い嫌悪感を覚えたのも本当のところです。

そんなわけで、前置きが長くなりましたが、4月の頭に休暇をいただいてクロアチアに行ってきました。拙ブログでは「カワイイ」クロアチアに対抗して、全編モノクロ写真でお送りしたいと思います(笑)。

まずは、ロンドンから「アドリア海の真珠」と呼ばれる、壁に囲まれた街ドゥブロヴニクに飛びました。

ケーブルカーで山の上まで行って、そこから撮った風景。
この日はけぶってましたが、壁に囲まれているのがわかるでしょうか。

モノクロの写真からはまったくわからないと思いますが(笑)、オレンジ色の屋根がぎゅうぎゅうと詰め込まれた感じの、かわいらしい街です。現在ではすっかり再建されていますが、91年のユーゴスラビア崩壊にともなう紛争の際には、街は半壊し、いまでも、東側の入口にあたるプロチェ門の脇には、どの部分が破壊されたのかがわかる地図が掲げられています。街を取り囲む城壁は、約2キロ。壁の上をぐるりと一周歩くことができます。

ドゥブロヴニクはトリエステポルト同様、私好みの洗濯物のはためく階段だらけの街で、どこを歩いても心躍る風景に出会うことができます。

こういう坂道がいっぱいなのです。

いろんなところから、こんにちは。

あっちこっちで、リラックスした様子のネコたち。

ドゥブロヴニクは美しい街ですが、クロアチア一物価が高いことでも知られているそうです。なんと、クロアチアのほかの街に比べると、その物価は、1.5倍とも2倍とも言われているとのこと。レストランでの食事も、相場はロンドンと同じくらいか、またはちょっと高いかくらいの印象でした。

さて、そんな美しくも高いドゥブロヴニクで3泊したあと、南西に向かう長距離バスに乗り込み、クロアチア第2の都市スプリットを目指しました。

ドゥブロヴニクからスプリットまでは、バスで4時間半。ドゥブロヴニクやスプリットのあるアドリア海に添って南側に延びるダルマチア地方は、一ヵ所ボスニアに分断されていて、たった8キロのボスニア領をはさんで、バスは2度、国境越えをしなければいけません。道路上に青い小屋の並ぶ、まるで高速道路の入口のような関所があり、ここで、バスのなかにボスニアの警察官が入ってきて、乗客全員のパスポートをチェックします。そして、8キロ先の国境で、再度、同様にパスポート・チェックが行われるのです。

スプリットから、フェリーに乗って40分、アドリア海に浮かぶブラチという島に向かいました。ロンドンで近所に住んでいて仲良くしていた友人夫婦が、5年ほど前に、このブラチに移住したのです。フェリーを下りると、彼らがすでに待っていてくれて、かつて北ロンドンでしたのと同じように、お料理上手な彼女の食事を囲んで、夜遅くまで喋ったり歌を歌ったり(笑)、昼間は海沿いをいつまでもだらだらと散歩したり、のんびり楽しい3日間を過ごしました。

この写真からはまったくわからないと思いますが(笑)、アドリア海の海の色は深い深い青でした。

シーズンオフということもあり、ドゥブロヴニクとはまったく違って、観光客はまだ皆無。村の人々は全員、互いに知っているという空気があり、久しぶりに自分が外国人であることを意識しました。なんというか、本当に久しぶりに、人から見られている、という感じがするのです。同じ外国人として生活していても、ロンドンでは感じたことのない感覚です。

これが、田舎の島だからなのか、はたまた旧社会主義国のもつなにか、なのか、それは私にはよくわかりません。でも、友人カップルがこの島に家を買って改装しているときにあった、こんなエピソードを話してくれました。

彼らが家を買ったのは、まだクロアチアがEUに加盟する前の5年ほど前のこと。いまよりもずっと購入の手続きは複雑だったそうなのですが、ようやく所有者としての手続きを終え、地元のビルダーさんにお願いして、家の改装を始めたそうです。改装というと聞こえはよいですが、はっきり言って、これは遺跡と言った方がよいのでは、というような状態の「家」で、壁も天井も屋根もやり直さないといけないような大がかりなものです。所有権を得てから、ほぼ2年間、彼らはロンドンから時々やって来ては、進捗状況を確認する日々だったとのこと。

さて、この大がかりな改装工事、前述のように村では誰もが知っている地元のビルダーさんが仕切って、必要に応じて彼が人を雇って、作業を進めました。あるとき、友人夫婦がたまたまロンドンから様子を見に来ているときに、ふたり組の警察官が家にやって来て、「この家の所有者はあなたたちか?」と言う。ふたりが「そうだ」と答えると、「この紙に、あなたたちの名前と住所と、あなたたちの父親の名前と住所を書きなさい」と書類を突き出されたそうです。

改装作業をしていたビルダーのひとりが裏の窓から逃げてしまったのは、友人夫婦が意味もわからず、自分とそれぞれのお父さん(!)の名前と住所を書いている間のことでした。逃げ去ったのは、ボスニア人の不法労働者です。

これがどういうことか、というと、どうも近所の誰かが、この家の改装工事を観察しているうちに、ここでボスニア人が働いているらしい、と警察に通報した、という顛末のようなのです。「誰もが互いを知っている」この村の、しかも目の届く範囲の隣人が、です。人の心にすり込まれた、社会主義のメンタリティは、早々簡単に変わるものではない、ということなのでしょうか。

閑話休題。

ブラチ島には、美しいビーチと港がたくさんあり、3日間ではとてもとてもすべてを見て回ることはできず、再訪を誓いました。

ブラチ島のミルナという港の村で。
ここに来るまでのバスの旅は、めまいがするほど美しい風景の連続でした。

海の底にウニがゴロゴロと…!

最終日は、スプリットの空港にほど近い、やはり壁に囲まれた小さな島、トロギールに1泊しました。ガイドブックを見て、トロギールにはぜひ行ってみたかったので、「よしっ、観光するぞ!」と腕まくりしたのも束の間、あっちもこっちも観光名所の扉は固く閉ざされています。なんと、このシーズンは、大聖堂以外のすべての観光名所は、朝の3時間しかオープンしていないそうです(ショック)。またしても再訪決定です。

大聖堂の鐘楼から見たトロギール。

カトリックとセルビア正教会とイスラム教と、複雑な歴史のなかで奪ったり奪われたりの繰り返しをくぐり抜けてきたクロアチア。難解でありながら、美しいカリグラフィを読み解くような深遠なおもしろさのあるところ。時間をかけて、何度も訪れて、少しずつ仲良くなっていきたい、そんな場所です。

トロギールの大聖堂で。






16.3.14

とらまい展(3月19日まで)

ロンドンを拠点に活躍するフォトグラファー、平田真弓さんと、彫師(タトゥー・アーティスト)初代彫蓮さんによるエキシビション「とらまい展」に行ってきました。

©Mayumi Hirata
虎舞で使用される虎の顔は、地域ごとに、それぞれ微妙に異なるのだそうです。

ご存知の方も多いとは思いますが、虎舞とは、東北の三陸沿岸地方の伝統芸能で、張り子の頭と布の身体でつくられた虎のなかに人が入って舞う、というものです。

©Mayumi Hirata
真弓さんが現地で密着して撮った愛ある写真の数々。
東北大震災で壊滅的な被害を負った地域の「虎舞の再生」に魅せられて、それぞれのかたちでサポートしてきたおふたりの写真と掛け軸アート、さらにビデオや実際の虎のインスタレーションなど、すみずみまで楽しめるすてきなエキシビションでした。

©Mayumi Hirata
部屋の片隅にちりばめられた小さな写真作品もひとつひとつがすてきでした。
すみからすみまで、ひとつひとつ見るのがおすすめです。

彫蓮さんは、オーストラリアでタトゥーの魅力にとりつかれ、30歳にして独学で彫師になり、現在では彫師本来のお仕事のほかに、世界のタトゥーコンベンションでトークやデモンストレーションを行うほか、大漁旗の制作まで幅広く手がける異色のアーティスト。今回、このエキシビションのために日本から駆けつけられたのだそうです。

©Mayumi Hirata
壁にずらりと並んだ掛け軸アート。虎舞の虎も間近で見ることができます。

この掛け軸アートは、真弓さんの写真作品とのコラボで、彫蓮さんが2枚の写真からインスピレーションを得て作成されたものなのです。

例えば。

真弓さんのこの2枚の写真をもとに……

この掛け軸ができあがりました。

一点一点が「なるほどぉ」と思うものばかりで、楽しいのです。

おふたりの虎舞への愛がたっぷり感じられる、そして岩手の伝統芸能とそれを支える人々が近くに感じられるみどころたくさんの展示会でした。

3月16日(今日です!)には、バイオリンとクラリネット演奏、アーティスト・トークなどを含むお茶会が開催されるそうです。ご興味のある方は、ぜひお運びください。

©Dirk Lindner
平田真弓さん(左)と彫蓮さん(右)。
被災地を自分たちの目で見てきたおふたりならでは、の
興味深いお話が聞けるチャンスでもあります。

とらまい展(3月19日まで)
5th Base Gallery
23 Heneage Street, London E1 5LJ(ブリック・レーンからひとつ曲がった通りです)
http://www.5thbase.co.uk/

平田真弓さんのウェブサイト
http://mayumihirata.com/

彫蓮さんのウェブサイト
http://www.horiren.com
(彫蓮さんの入れ墨に対する哲学が感じられるProfileのページは必見です)

※平田真弓さんの虎舞の写真集も発売中です。
収益は被災地に寄付されるとのこと。
http://www.blurb.co.uk/b/4194589-dance-tiger-dance

14.3.14

The Knitting & Stitching Show


控え目な看板が出ている以外、なかに入ってエレベータを降りるまでは、
クラフトらしい風景もないので、お見逃しなく。

3月13日から開催中の「The Knitting & Stitching Show」に行ってきました。

これは、名前の通り、編みものと縫いものを中心としたクラフト業界の見本市です。材料を製造、販売している業者さんやショップ、デザイナーなど200以上が出店しています。

なかに入ってエレベータをファーストフロアで下りると、クラフト好きの方なら一気に気持ちの上がる、こまごましたものがたくさん展示されているのです。

布やキット、お裁縫の道具、布にプリントするための
ウッドブロックなどなど、ありとあらゆるものがあります。

各ストールで実演販売が行われているほか、さまざまなワークショップも開催されていて、ついつい時を忘れてしまいます。

「International Felt Makers Association」のストールでは、フェルティングを実演中。
柔らかなウールを紙のようにうすーくのばしていくのですが、
使っているのはプチプチと石けん水です。

これ以上、余計な趣味を増やしてはだめっ、と自分を厳しく律していないと、あれもこれもと、ついついいろいろやってみたくなってしまうのが厄介です。

ショッピング以外にも、デザインコンペがあったり、
自由に編みものやミシンがけができるコーナーが設置されていたり、
クラフト好きにとっては遊園地のような空間なのです。

「わっ、安い!」と思うものや、「えっ、こんな道具があるの?」といった驚きを伴うアイテムにも出合える一方で、よく見てみたら普通にショップで売っているのとまったく同じ価格で売られているものもあり、ついつい盛り上がって買いすぎてしまうと、実はamazonで買う方が安かった、といったケースもあるので、こういう場所で勢いで買い物をするのはタブーです。

と、わかってはいるのに。

こちら、この日の戦利品。

なんだって、こんなにボタンばかり買ってしまったのか……。
でもこのセーター型のボタンには一目惚れでした。

普段、ボタンホールをつくるのが面倒だから、というズボラこの上ない理由だけで、ボタンのいらない洋服しか作らないくせに、なぜか調子づいて、ボタンばかりこんなに買ってしまいました。勢いって怖いです。

写真の布も「バイオリン柄のファブリック、かわいーっ♡」と、これまた勢いで買って、「ふふふ、これ買っちゃった」と夜、夫に見せたら「へー、ギター柄なんだね」とバッサリ斬られ、ガーン。確かによく見たらこれ、ギターですよね。なんでバイオリンって思ってしまったのでしょうか。急に自分のなかで、がくーんと価値が急落したような気がしました。布に罪はないのですが、まったく。

イベント会場でつい興奮してしまって、あばたもえくぼ、ギターもバイオリンに見えてしまったのでしょうか。いや、いいんですけど、ギターでも。ぶつぶつ。

こちらのイベントは、16日まで開催中です。ご興味のある方は、ぜひ。
http://www.theknittingandstitchingshow.com




9.3.14

畑の春準備。

冬の間はちょっと休眠状態だった畑の作業もいよいよ再開です。

数ヵ月前から、畑の大家さんが連絡を取ろうとやっきになっていたのが、とある乗馬クラブの関係者。畑の肥やしとなる、馬糞を譲ってもらうためです。

先月ようやく連絡を取りつけて、いよいよ今日、馬糞1トンが畑にやってくる馬糞記念日でした。

朝からゲートの前にビニールシートを敷いて準備。
馬糞を載せたトラクターは、こんなに狭いところでも華麗なるターンを決めました。


私にとっては、初めての馬糞体験。1トンといっても、いったいどのくらいの量なのか、想像もつかなかったのですが、このトラクターが引っ張っている小さめの荷台にいっぱいくらいの量。

うしろの板をはずして、荷台をぐぐぐぐっと上げると、
どさどさどさーっと、シートの上に馬糞の山が。

馬糞は、古ければ古いほど発酵が進んで、肥やしとして最適なものになっていくのだそうです。今回もってきていただいたのは、1年もので、まったく臭くないのにもびっくりしました。

この山を手押し車に載せて、次々エッサホイサと畑に運んでいきます。

手押し車2台を使って、3人で、かわるがわる馬糞を載せて運ぶことを繰り返し、3時間で、畑にすべて移動完了しました。

とりあえず、畑の端っこに山にしておいて、順次必要な部分にならしていきます。

作業が終了する頃には、すでに全身筋肉痛。

でも、ワンズワースの詩にあるように「Learn to Labour and Wait」、畑仕事に関しては、やることだけやって、あとは結果を待つ、という姿勢が重要なんだろうなぁと、これまた改めて思った日でした。

全身馬糞まみれになったし、身体は疲れたけれど、しっかり身体を使った仕事をして、ぐっすり眠る生活というのは、実はとても健全なのでしょうね。

春はもうすぐ。また今年も畑の一年が始まります。






3.3.14

水兵リーベ僕の船、Yes, I have a number

数字も元素記号も年号も、覚えるのは一苦労。
記憶が穴ぼこだらけなのは、いまに始まったことではないのです、私の場合。


先日、夫とご飯を食べながら、最近塩分を控えている彼に「塩分を控えるのも大切だけど、塩分を身体の外に出す働きをする『カリウム』を摂取することも大切なんだって」とにわか知識をひけらかしたら、「へっ? 『カリウム』ってなに?」とすっとぼけた返事。

「えっ、『Kalium』知らないの? 元素記号の『K』だよ。『水兵リーベ僕の船』って知らんのか、君はァー?」と問うと、「んんん? (iphoneで急いで調べる)あ、あぁ、なーんだ、『ポタシウム』のことかぁ」ときたもんです。

「ポタシウム」と呼びながら、元素記号は「K」。ほかにもこういうのはたまにあって、「ナトリウム」も英語では「ソディウム」。なんでも「ソーダ」からきた言葉なのだそうです。「ソディウム」と言いながら元素記号は「Na」。ややこしいったらないです。

ほかにも「マーキュリー」が水銀。水星=マーキュリーでわからなくはないですが、元素記号「Hg」にしてマーキュリー。「日本語ではマーキュリーってなんなの?」と聞かれ、「そのまんまよ、『Hg』そのまんま。『ハイドロ(H)』で『銀(g)』だから水銀」(銀は嘘です、念のため)などと。

「水兵リーベ僕の船」は、同年代の方ならきっと似たような覚え方をされたと思いますが、元素記号表を丸暗記するための語呂合わせです。いま思えば「シップスクラークか」ってなんだよっ、という感じの、まったくもってひどい終わり方のこの語呂合わせ、覚え方の文言を覚えていても、実際紙に正しく書くことができません。

同様に、つづいて円周率の話になり、「いやー、円周率っていったら、3で小数点以下は、『一夜一夜にひとみごろ』だわよ」と自信満々に言い放ったら、夫から、「それは違う」ときっぱりと否定され、ショックを受けながら調べたら、「一夜一夜にひとみごろ」は、「√2」でした。同じく「富士山麓にオウム鳴く」がなんだったのか、忘れてましたが、これは「√5」。

覚え方を覚えていても、それがなにするのかをすっかり忘れてしまっては、意味がないですよね。

英語にはそういう語呂合わせがないのか、と思ってネットで調べてみたら、円周率は「Yes, I have a number」なのだそうです。なんじゃそりゃ、と読み進めると、キーとなるのはそれぞれの単語の文字数。「Yes(3), I(1) have(4) a(1) number(6)」で、3.1416となるらしいです。

といっても、夫(現在50歳)の年代では、そういう覚え方はなかったとのこと。最近はそういうふうに教えるのでしょうか。

それにしても「りかちゃんはさみしいの」って、なんだったかなぁ……。


28.2.14

Domestic Goddess(の見習い)

英語で「Domestic Goddess」という表現があります。直訳すると「家事の女神さま」。

ケーキ作りとか、お裁縫とか、お掃除とか、そういった家事にすぐれた女性、言ってしまえば「主婦の鑑」みたいなところでしょうか。

昨年の12月、今年の1月、2月と、いつになくシリアスにお料理に向き合ったり、クラフト熱が再燃したりしていました。

ビミョーに模様編みが間違っているうえ、私の頭には小さすぎて、
さらにまったく似合わないため、ティーコゼーになってしまった元ぼうし(涙)。

まず、ちょっとハマっているのが、お豆腐作りです。
日本から遊びに来た友だちが持ってきてくれた木枠のキットをつかって、説明書どおりにつくってみたら、はじめてでもかなり上手にできたのに気をよくして、週に一度の頻度で手作りするようになりました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、以下がざっくりとした作り方。
1)大豆を水につける(冬場は18時間くらい)
2)フードプロセッサーで1)をピューレ状にする
3)ピューレ状にした2)をなべに入れて火にかける
4)沸騰したら一度火をとめ、泡がおさまったら弱火に10分ほどかける
5)布袋に4)をあけ、絞る(袋のなかに残る「濾しかす」がおから)
6)絞った豆乳を火にかけ80度にあたためる(表面にできるのが湯葉)
7)ボウルに6)をあけ、にがりをまぜる
8)全体が少し固まってきたら、布を敷いた木枠に7)を入れ、重石をのせて15分
9)水をはったボウルに8)を入れて、そっと木枠と布をとってできあがり

手作りのお豆腐は、お豆腐自体、こってりとあまくておいしいのですが、それと同じくらい嬉しいのが、おからがたっぷりとできること。

おから、自家製つぶあん、タマゴ、きなこ、抹茶、ベーキングパウダーのみで
つくったパウンドケーキ(もどき)。バターなしでおいしくできました。

最初はおから入りハンバーグとか、肉団子くらしか思いつかなかったのですが、おからのケーキやビスケットが意外においしいことを知り、最近ではインターネットでおからスイーツのレシピを検索しては、あれこれと試しています。

もうひとつ、豆つながりで、最近楽しんでいるのが、もやしづくりです。

ちょっと気持ち悪いかも、ですが、大豆のもやし栽培4日目くらいでこんな感じです。

もやしというと、まず思いつくのが大豆ですが、辞書を引くと「穀類などを水に浸し、日光を遮って目を出させたもの」とあります。畑の大家さんに教えていただいた、もやし栽培容器をamazonで購入し、緑豆、レンズ豆、そばの実など、いろいろ試しています。

レンズ豆のもやし。サラダにしたらぴりっとスパイシー。
カレーに入れてもおいしかったです。

栽培キットといっても、非常に簡単なしくみで、細い穴のあいたトレーが3段、穴の空いていないトレーの上に重なっているだけのものです。このトレーにそれぞれ豆を入れて、毎日上からコップ1杯の水をかけるだけ、という単純さ。でも、このキットがなくても、ザルを使えば、簡単に作れるように思いますので、ご興味のある方はぜひお試しを。

小さい豆のほうが発芽も早く、上手にできるような気がします。ネットなどで調べてみると、豆や穀類は発芽すると種子のときにはなかったビタミンなどが生成され、栄養素が増えるらしく、ローフード・ダイエットをされている方々にも人気があるようです。私は特にローフードにこだわっているわけではないので、火を通したり、通さなかったり、いろいろですが、もやしが気軽にたっぷり食べられるのは嬉しいです。

最後に、日本の知人にツイッターで教えていただいて、日本から買ってきた「吉田晒(よしださらし)」。

久々にミシンがけしました。

10メートルたっぷりと巻かれている晒を、40センチくらいずつ、ビリー、ビリーッと裂いては、布巾として使っていたのですが、さすがに裂いたあとがぼろぼろとほつれてきたので、重い腰を上げて、両端をミシンがけしました(というか、最初からしたらよかったんですけど。トホホ)。

さらしは、とにかく乾くのも早く、また前述のお豆腐用の袋や布にも使えるし、また、いつもは使い捨ての出汁袋を使っていましたが、晒で小袋を作って出汁袋にすれば、何度でも使える、とのこと。

まだまだ、「Domestic Goddess」への道は遠いですが、去年より、30センチくらいは近づいたかしら、という感じです。