思わずこういう写真が撮りたくなる、ローラ・ナイトのセルフポートレート。 |
今日、7月11日からナショナル・ポートレート・ギャラリーで開催される、ローラ・ナイトのポートレート展のプレス・ビューに行ってきました。
私も、今日資料をちゃんと読むまでよく知らなかったのですが、ローラ・ナイト(1877〜1970)は、英国を代表する女性画家であり、英国ではキャリアを追求する女性の草分け的存在のひとりとされているそうです。
そんな彼女の作品を時系列に追って紹介しているのが、このエキシビションで、ローラ・ナイトによるポートレートを集めた初のメジャーなエキシビションとのこと。
プレスビューでは、この企画を担当したキュレーターのロージー・ブロードリーさんによる解説があって、彼女の作品そのものもさることながら、その変遷を通して20世紀の英国における女性の立場が読むようにわかる、そんなエキシビションでした。
例えば、ローラ・ナイトは13歳のときに、最年少の生徒としてノッティンガム美術学校で学び始めるのですが、当時の英国の公立学校では、女子生徒は生身のヌードモデルを見て描くことが許されておらず、人体モデルやマネキンを見て描くしかなかったのだそうです。同じく絵描きの男性と結婚し、コーンウォールのアーティスト・コミュニティに移り住んだ彼女は、ここでようやく、友人で同じくアーティストのエラ・ネイパーをモデルに、裸婦を描いている、というのが、入口の一番近くに展示されている上の写真のなかの作品です。
ローラ・ナイトの作品群を見ていて、私が興味をそそられたのは、彼女が作品のテーマに思い切り踏み込んでいる点でした。例えば、シアターやバレエの舞台裏に入り込んだ絵を描いていたり、ジプシーのコミュニティに何ヵ月も通って、そのなかの一家族と親しくなり、彼ら家族全員のポートレートを描いていたり、サーカス団について一緒に移送しながらその様子を描いたり、と、まるで、写真でいうところのドキュメンタリー写真のような作品づくりをしていたようです。
また、第二次世界大戦のときには、従軍記者として戦地に赴き、工場や補助部隊で働く女性の姿を描いたり、そしてニュルンベルグ裁判のときも記者席からその裁判を見つめ続け、その様子を作品にしています。
写真家が従軍するというのは、よく聞く話ですが、画家が、しかも女性の画家が従軍する、ということもあるなんて、正直なところ、まったく考えたこともなかったです。
その功績は広く認められ、王立芸術院で初の女性正規会員となったり、また、男性の「ナイト」に相当する「デイム」の称号を与えられたり、と、おそらく、英国の女性画家としてはその社会的地位をきちんと認められた、最初の人といっても、過言ではないのかもしれません。逆に言うと、女性のアーティストが立場を認められるようになったのも、ほんのここ100年ほどのこと、ともいえるのでしょう。
作品の美しさはもちろんなのですが、働く女性にとっては、なにかしか共感が得られるエキシビションだと思いました。
Laura Knight Portraits
National Portrait Gallery(10月13日まで)
http://www.npg.org.uk/whatson/laura-knight-portraits/exhibition.php
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