8.4.09

映画「Dammed United」とイングランド・サッカーの衰退

映画「Dammed United」を観てきました。
この映画は、60年代後半にイングランドのサッカー・リーグ、
セカンド・ディヴィジョンの最下位群にいたチーム、ダービーを
見事プレミアリーグ昇格、そしてプレミアリーグのトップへと率い、
さらに、70年代にやはり無名チームだったノッティンガムを
2度も欧州杯で優勝するに至らせたブライアン・クロフ監督の成功と、
リーズ・ユナイテッドでの失敗を描いた作品です。

ダービーで大成功を収めるも、マネジメント陣と対立してしまった
クロフは、チームを去らざるを得なくなります。
そこで、次にブライトンからオファーを受けたクロフは言うのです。

「ブライトンは自分の土地じゃない。
自分のチームじゃないのに監督はできない」

この台詞、いまのイングランドのサッカーに
いま一度思い出してほしい、と思ってしまいました。

前回の欧州杯では、思いっきり予選落ちを遂げたイングランド。
この敗退図の後ろ側には、このメンタリティを忘れて、
コマーシャリズムに走り続けた背景があると思うのです。

その昔、サッカーは地元民のものでした。
土地のチームをサポートし、地元のスタジアムに通い、
子どもたちは地元のスター選手を見て、
サッカー選手に憧れて、学校のチームで汗を流していました。

しかし、特にルパード・マードックによるメディア合戦以来、
サッカー、特にプレミアリーグは、
地元民の手の届かないところに行ってしまった。

テレビ観戦しようにも、有料の衛星放送。
スタジアムに行こうと思っても、年間契約の法人席を得たり、
年間数百ポンドを支払っての会員になって初めて、
100ポンドからする入場券が買えるという、商業主義。
庶民からは遠く離れたところに行ってしまったのです。

子どもたちのサッカー離れは進み、
いまではサッカーチームのない小学校も多いと聞きます。
そんななかで、未来の人材が育っていく厚い層が
期待できるはずもありません。

そんな理由から、少なくともこれからの20年も、
イングランドのサッカーがさらなる衰退の道をたどるのは、
悲しいかな、目に見えていると、私は思ってしまうのです。

「Dammed United」がちょっとでも、
失われた庶民のサッカーを思い出させてくれる
カンフルになるといいなぁと願わずにはいられないです。

6 件のコメント:

  1. そういえば、ちょっと前に、それもほんの数行のニュースで、イングランドの予選落ちを読んだ覚えがありました。読みながら「へ?なんで?」と首を傾げたような気がします。
    まあ、野球の世界にだっておんなじようなことが起こるのだし、と気軽に思っていたけれど、なんだかそうじゃなさそうですね。

    サッカーチームの無い小学校があるだなんて……ショックです。他の国ならまだしも、イギリスなんだもん。
    庶民の手からもぎ取られてしまった観戦の楽しみ。こっちでも観戦は安くはないけれど、いい席を望まなかったら観れないことはありません。

    その土地に暮らしているからこそのKYOさんの杞憂。
    目先の儲けにがんじがらめになっている連中よりも、その映画に奮起されて新しい風を起こす人達が現れることを祈りたいです。

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  2. まうみさん、こんにちはーー。

    そうなんですよー、本当にイングランドのサッカー、ダメダメなんです(泣)。
    プレミアリーグなんて、地元選手はおろか、もう外国人選手だらけだし、外人だらけのチームで強くたって、ナショナルチームになったら、当然ダメダメのぼろぼろに戻ってしまうという・・・。

    プレミアリーグ以外の、三部リーグくらいの「下位」チームががんばってプロモーションしてくれて、世の中がプレミア離れしてくれたら、ひょっとしたら・・・なーんて夢のようなことを思ってしまったりして(笑)。

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  3. ビジネスがスポーツの勢いを止めてしまうなんて、本末転倒もいい所ですね。
    サッカーチームのないイギリスの学校って、ショッキングですね。

    そういわれてみれば、相撲部のある学校が稀少である日本はダメダメですね。。。


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  4. 私も"The Damned United"観ました。
    FA Cupでノンリーグサイドがリーグサイドと対戦するような、あのロマンを感じました。とてもいい映画だと思います。
    リーズ・ファンにはウケないでしょうけど。
    フットボールの商業主義、ほんとですよね。それに、セレブリティと化した選手たち、WAGカルチャー。映画の中でクロフがチェアマンに「労働者階級の地元サポーターが応援してくれるいいチームを作りたいんだ!」みたいなことを言ってるのを観て、そうだ!これなんだよ!と、一人熱くなってしまいました。

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  5. ししははさん、こんにちはーーー。

    本当に、本末転倒ですよね。
    イギリスは、しばらくダメですよ、たぶん、サッカーは。悲しいですね。

    本末転倒といえば、F1もビジネスに走りすぎて、世界的な恐慌とともに死にかけているスポーツのひとつですね・・・こちらも残念です。

    そういえば、少ないですよね、相撲部! モンゴルやハンガリーの学校にはあったりして!

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  6. Nicoさん、コメントいただき、ありがとうございます!

    Nicoさんもご覧になったんですね。おもしろかったですよねー。
    クロフが、マネジメントに吠えるシーン、よかったですよね。スタジアムに金をかけるといっても、一部のコーポレート席かなんかを改善するだけ、とかそういうシーンでしたよね?

    イースター・フライデーは、ちょうど20年前にリバプールのサポーターが、スタジアム内の事故で100人近く亡くなった日、ということで、特別番組をやっていたのですが、ちょうどその日のリバプールの相手というのが、ノッティンガム・フォレストだったらしく、当時の映像でクロフがけっこう映っていましたよ。

    なかなか、考えさせられる番組でした。

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