10.11.13

白いポピー

こんな白いポピーがあるのをご存知でしょうか。

11月11日の英霊記念日に向けて、ロンドンの街にポピーの花が溢れるこの時期は、毎年自然と戦争について考えてしまう、英国にとって、日本の8月初旬のような季節です。
(ポピーの花と英霊記念日との関連については、一昨年のこちらのポストをご参考までに)

振り返ってみると、去年一昨年も戦争に関することをブログに書いていました。

先日、スタンステッド空港で小銭をポピーアピールの募金箱に寄付したら、「ぜひポピーを持っていってください」と言われました。「いえいえ、けっこうです」と言ったのですが、典型的な英国人紳士(に見えるこの男性)、「I insist...(まぁ、そうは言わずに…みたいなニュアンス)」とこれまた典型的な英国的受け答え。ありがたくひとつ受け取って、胸につけました。

私は戦争で傷ついたり亡くなったりした、すべての方に対して心から同情はしますし、痛ましい気持ちにはなりますが、第二次大戦では敵国であった日本から来た私が、英霊記念日に向けて赤いポピーの花を胸につけるのは、どうなんだろう、という複雑このうえない思いがあり、いままで募金はしても胸にポピーをつけたことはありませんでした。

そんな話を、11月第2日曜日、英霊記念の式典が行われる日曜日の今朝、夫にしたところ、「英国人のなかにも、そういう人はけっこういて、白いポピーを胸につけている人がいるよ」と言うのです。

そこで、さっそくネットで調べてみたところ、白いポピー・キャンペーンは、戦争で命を落とした英国兵、さらに自国、敵国をわけず、戦争で命を奪われたすべての市民に対する哀悼の思いと、明確な「反戦支持」を意味し、1933年に始まったものだそうです。英国の非政府組織の反戦団体である「Peace Pledge Union」が運営しています。

Peace Pledge Unionのウェブサイトを見ていたら、白いポピーのリースを記念碑に手向ける式典が正午からタビストック・スクエアで行われたとのことだったので、ちょっと見に行ってきました。

ラッセル・スクエアの北側にある公園です。

私が到着したときには、すっかり式典も終わって、人もまばらな静かな公園でしたが、式典の名残はちゃんと残っていました。

戦争で戦った人、ではなく、戦わないことを選んだ人々を讃える石碑の下に、白いポピーのリースが置かれています。

石碑には、「TO ALL THOSE WHO HAVE ESTABLISHED AND ARE MAINTAINING THE RIGHT TO REFUSE TO KILL」とあり、「Conscientious Objectors」を讃えるもののようです。「Conscientious Objectors」は、日本語にすると「良心的兵役拒否者」と、あまり聞き慣れない言葉ですが、Wikipediaによると「良心的兵役拒否」の項で、以下のような説明がなされています。

「国家組織の暴力、とりわけあらゆる形態ないしは特定の状況下の戦争に参加することや義務兵役されることを望まないこと。当人の良心に基づく信念であり、拒否した者を良心的兵役拒否者 (conscientious objectors, CO's) という」

もちろん、英国でも大戦中に召集を受けたら拒否することは許されなかったわけで、徴兵されることよりも投獄されることを選んだ人々、ということになります。

反戦をうたう、メッセージがリースの中央に。

余談ではありますが、同じタビストック・スクエアには、こんな記念樹もありました。

広島の原爆で犠牲になった人々に捧げる記念樹だそうです。

多分に理想論が入っていることは承知の上で、白いポピー、気になる存在です。


一方、こちらは、通常の赤いポピー。こちらも今日はいろんなところで、記念碑にリースが手向けられる式典が行われたようです。

ユーストンの駅前。

よーく見ると、前列右側は、元国会議員でジャーナリスト、鉄道番組に出演している
マイケル・ポーチェロさんが、戦死を遂げた鉄道員たちに捧げたものでした。

赤いポピーのリースを抱えて、式典の準備を急ぐ、ハイゲイトの牧師さん。

白も赤も、ポピーにあふれた11月第2日曜日のロンドンでした。

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