読書中はついついカバーを脱がしてしまう私です(同じ写真でスミマセン)。 |
さて、急にふたつに分けることに決めた、「おすすめしたい私の好きなふたつのこと(もの)」②は、ミュージシャンであり詩人のパティ・スミスさんの「ジャスト・キッズ」という本です。
この本がうちのポストに届いたのは、今年のはじめのことでした。以前にお仕事で、何度かご一緒した、お友だちのライター兼翻訳者の小林薫さんが、ご自身の訳書が出版されたから、ということで、わざわざ日本から送ってくださったのです。
今年前半は、私も仕事が忙しく、落ち着いて本を読む間もなく、時が過ぎてしまったのですが、秋になってようやくまとまった時間ができて、読み始めたが最後、もう夢中で最後まで読んでしまいました。
この本は、パティ・スミスが、1989年に41歳の若さで亡くなった写真家ロバート・メイプルソープと過ごした20年間を綴ったものです。1967年、まだなにものでもなかった20歳のパティ・スミスが、スーツケースひとつでNYに出てきて、ホームレス生活を送っているところに出会ったのが、こちらもまだ、なにものでもなかったロバート・メイプルソープだったのです。
ふたりは恋人であり、兄弟のようであり、同士であり、そしてロバート最期の日まで絶対的な親友だったことが、この本からうかがえます。アートに悩み、自分のアイデンティティやセクシャリティに悩み、壁に爪を立てるようにもがく彼らの周りには、ウォーホールや先日亡くなったルー・リード率いるヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジャップリン、ウィリアム・バロウズ、ジム・キャロルといったそうそうたるビートニクの主要メンバーがいました。
当時まだなにものでもなかった人々と、すでに世に名前を馳せていた人々、道半ばで命を落とした人、いまもそれぞれの業界を牽引している人、そんな数々の名前が交差して、人間関係をかたちづくり、離れ、戻り、必死に自己表現の道を探す様子が、とても興味深く描かれています。
そしてなんといっても、パティ・スミスのポエティックな表現が、ただでさえ興味がつきない当時の人間関係を、さらにリリカルにひもといていくのです。
そんな文章の魅力をあますことなく訳文で表現した、小林薫さんと共訳者である、にむらじゅんこさんには、心からの敬意を表したい気持ちです。
秋の夜長、ちょうど読書のシーズンです。
よろしかったら、ぜひお手にとってみてください。
「ジャスト・キッズ」(河出書房新社刊)2380円(税別)
パティ・スミス著 にむらじゅんこ/小林薫 訳
秋の夜長にぜひ。 |
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