21.8.10

プラム仕事(その1)

知り合いの方から「うちの庭にあるプラムの木の実で梅干しが作れるらしい」と言われて、「よかったら作ってみない?」と持ちかけられたのは、今年の春のこと。

英語では、スモモも梅も「プラム」です。梅干しは、「ピクルド・プラム」と呼ばれています。同じプラムなら、きっとできるはず。

梅干し大好きな私としては、一も二もなく、「やりますやります」と即答し、いよいよ、シーズンがやってきて、プラムが我が家にやって参りました!

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ぜんぶで、2.7キロ。まずは、いたんでないもの(梅干し用)、ややいたんでいるもの(梅ジュース用)、かなりいたんでいるもの(ジャム用)に洗いながら選別。

さらに二度洗いしつつ再チェックし、梅干し用には約900グラムの精鋭たちが選ばれました。

通常梅干しには粗塩が使われるのだと思いますが、こちらロンドンには粗塩なるものは見当たらず。しかたがないので、ギリシャのシーソルトを用意しました。

梅干しをつけながら、思い出していたのは父のことです。

私の父は、6年前の11月にがんで他界しているのですけれども、その年の春には、まだ再発も判明する前で、そこそこ元気な毎日を送っていたのでしょう。生まれて初めて梅干しを漬けたのです。

私が小さい時には、縦のものを横にも動かさないような、典型的な戦前生まれの日本のお父さんだったのですが、病気をきっかけに仕事を引退してから、ボチボチお料理をつくる楽しみも覚えたようです。

でも、父の梅干し第1号は、固くて、ガリガリしていてお世辞にもおいしいものではありませんでした。

そうこうしているうちに、がんの再発が判明し、夏には再入院となってしまい、余命何カ月かと宣告されたのです。自分の病気のことをすべて知ったうえで、治療法を選んできた父だったので、当然、本人にも告知されました。

入院中の父に会うために、夏に帰国したときのこと。父と梅干しの話になったのです。

梅干しが固かったのは、十分に漬けることができなかったから。なぜ十分に漬けることができなかったかというと、カビがきてしまったから、と言うのです。

「ほんとは、漬ける前にホワイトリカーで、洗わなきゃいけなかったみたいなんだよ」と父。そして、ごくごくふつうに「来年は、もっとうまく漬けるよ」と言いました。

たぶん、父に「来年の梅の季節」なんて来ないことは、本人にもわかっていたはずなのに、いつもどおりの娘との会話のなかで、ふと口をついて出てしまったんでしょうね。

そのあとちょっとした沈黙が走り、そのときの父の気持ちを考えると、いまだに辛い気持ちになります。

そんなことがあって、梅は漬ける前に、ホワイトリカーで洗うべし、というのは、父の心残りを果たすことでもありました。

とはいえ、はて、ホワイトリカーとはなんぞや、ウォッカ? スピリットであることは間違いないだろう、ということで、うちのダンナがプレゼントでもらったまま放置していた焼酎を拝借することにしました。

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これをたっぷりボウルに入れて、父のことを思い出し涙目になりながら、梅をひとつひとつ、「これでもかっ」と、焼酎のプールでじゃぶじゃぶと洗いました。

まさに父の恨み、果たしたり。
というわけで、プラム仕事、第一弾完了です。

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左側がジャム用のプラム、真ん中の大きいビンが仕込み済みの梅干し用、右側の小さいビンが、仕込み済みの砂糖漬けの梅ジュース用です。

毎日、カビが来ないように、ギロギロ観察したいと思います。

12 件のコメント:

  1. ついに梅干し仕込み完了ですね!

    お父様のお話、ちょっとウルウルでした・・
    私の父ももっと早くにですが、がんで亡くなったので・・(T_T)

    しかし洗った焼酎・・・
    森伊蔵・・・美味しい焼酎ですよ~♪

    日本でも結構お高い方では(笑)

    出来上がりを楽しみにしてます~(^_^)/~

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  2. handshands22/8/10 10:18

    こんにちは。。。


    梅干し・・・
    なんか、涙ぐんでしまいました
    余命が宣告されるというのは
    どういう心境なんでしょうか・・・・
    想像するだけで、涙が出ます。
    私の母も、そうなんですけど。。
    この頃、よくそういうことを考えます。


    梅干しがプラムで!!
    どんな風になるのか
    出来上がりがとても楽しみですね
    お父様の失敗が
    KYOさんの成功につながりますように。。

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  3. けんば~ん22/8/10 22:08

    うるうるきました・・。

    私の父も15年前ガンで亡くなりました。同じような話を聞くと
    自分の体験も再びよみがえってきます。

    お父さまの思い出と梅干し・・・。
    おいしくできると良いですね!

    それにしても、梅の実も「プラム」なのですね・・。

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  4. 病床のお父様との思い出の梅干・・きっと成功すると思います!
    しかも森伊蔵で洗ったんだから美味しく出来るはず!
    こちらではホワイトリカーってすっごく安くて2Lくらいある焼酎が売ってます。

    私は梅ジュースとシソジュースを合わせて炭酸で割って飲んでいますが、すっぱくて夏にピッタリです♪
    そろそろ梅酒も良い感じに漬かって来ました。
    またKYOさんの梅たちのその後を教えてくださいね~

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  5. ひろさん、こんにちは!

    そうですか、ひろさんのお父さまも…。
    いつまでたっても、やっぱりふと思い出しますよね。

    ややっ、焼酎のこと、教えてくださってありがとうございます。
    実は私もそんな予感がしていたのですよ。
    たいてい、ダンナがお土産でもらうのは、高級品が多くて、「外人で味がわからないので、二番目に安いので十分です」って本人も言っているのですが、それでも気を使っていただくことが多く。

    私自身は下戸なので、お酒のよしあしはぜんぜんわからないので、まさに猫に小判、ブタに真珠夫婦といえましょう。

    あうー。

    梅は、逐次ご報告しますね~。

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  6. handshandsさん、こんにちはーー。

    お母様、たしかずいぶん若くして亡くなられたのですよね。
    がんだったのですね……。
    「この頃、よくそういうことを考えます」とおっしゃるところ、よくわかりますよ。ほんと。
    いつか自分にも確実に死がやってくるのに、身内や親しい人が持っていかれても、どこかまだ他人ごとな自分がいる、ということも。

    この梅干し、うまくいくかどうかは、微妙にまだわかりませんが、逐次、ブログでご報告したいと思います!

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  7. けんば~んさん、こんにちはー。

    けんば~んさんのお父さまも、そうなんですね。
    しかも十五年前というと、相当お若かったのでは……(けんば~んさんのブログなどを拝見していて、たぶん、
    けんば~んさん自身、私よりもお若いんじゃないかなーと想像し)。
    親との死っていうのは、自分がどれだけ大人になっても、やっぱりこたえるものですよね。

    そうそう、「スモモも梅もプラムのうち」(語呂合わせ失敗)なのですよ。私もちょっと楽しみです!

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  8. KGさん、こんにちはーー。

    うまくいくでしょうかね、この梅干しプロジェクト!
    わくわくしながら、実験気分です。

    はっ、KGさんも森伊蔵、ご存知なんですね。有名な焼酎なんでしょうか。
    ホワイトリカーって、そんなに安いんですか。口に入れても大丈夫な食用のお酒ですよね?
    なんかですね、ダンナに聞いたら「それってホワイトスピリットのこと?」って言われたんですけど、ホワイトスピリットっていうのは、食用じゃなくて、壁塗りとかペンキ塗りとかにつかう強烈なアルコールらしくて、「それはたぶん、違うと思う」と答えました。殺す気か~!

    梅ジュースとシソジュース合わせて、炭酸割り! さわやかーーですね。
    酸っぱいんですか? 梅と同量の角砂糖を入れるって書いてあって、ふぉー、こんなに砂糖いれるんかーって思ったのですが、それでもやっぱり酸味は強いんですね。

    ますます、楽しみです。

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  9. 目からウロコです!梅干しはこちらではもう作れない(なんてえらそうな言い方してるけど、実は作ったことなんか一回も無い?!)のかな~なんて諦めてました。

    おとうさんのことが、そういう日常の物事の中にしっかりと刻み込まれているのは、辛いけれどもあたたかい、胸がちょっと痛くなるけれども嬉しいことですね。
    わたしもKYOちゃんより4年早く、末期癌で父を亡くしたけれど、生きていた頃よりももっともっと、彼はわたしの中でくっきりと生きているような気がします。

    寂しいような寂しくないような。

    梅干しのその後のレポート、楽しみにして待っています。
    その焼酎、高いよ。梅もびっくりしてたかも。気合いが入ってきっとうまくいくと思います。

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  10. やっぱり海外在住者なら、一度は考えますよね~、梅干し作り(笑)。
    うまくいったら、ぜひぜひやってみてください。こちらもどうなることやら、ですけど。

    亡くなっていなくなってしまった親が、生きていた時よりも近く感じる感覚というのは、本当に不思議ですけどあるんですよね。そうなの。寂しいような、寂しくないような、なんですよね。

    やや、まうみさんも、森伊蔵ご存知なんですね。高いんですね~。きゃー、くれた人ごめんなさい!

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  11. プラム仕事のでき、素晴らしいですね~。
    お父様のお気持ちを継いで、
    きっとおいしい梅干しが出来上がるのでは…。楽しみですね。
     梅干しの出来具合、
    ぜひブログでお知らせください~。
    楽しみにしております!

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  12. mamiさん、コメントどうもありがとうございます!!

    毎日毎日、カビが来ていないか、ギロギロ目を光らせているんですが、カビよりも腐ってしまうのがコワイです。
    梅酢が上がってこないんですよ~、なかなか。

    今年がダメでも、来年も挑戦します。
    こうなったら、ライフワークの覚悟ですよ!

    経過のほう、ご報告します。

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