George McMullen 20 Oct 1920 - 09 May 2012 (c) Rie Asakura |
KRess Europeというのは、2006年1月に私(Kazuyo)と写真家のRieさんとで作った会社です。だから、KRが大文字の「KRess」。Rieさんはいまは、帰国されて日本で生活されていますが、RieさんがいなかったらKRess Europeはなかったし、またRieさんと私の周りからのあたたかい支援がなかったら、これまた、KRess Europeはなかっただろうな、と心から思います。
長年にわたってRieさんの大家さんだったGeorgeは、そんなKRess最初期の支援者のひとりでした。RieさんとGeorgeの関係は、大家と間借り人というボーダーを超えて、「ソウルメイト」みたいな存在だったんじゃないかな、と思います。
ただキュートな老人というだけじゃなくて、その強烈な個性と彼の激動の人生を、ずっとRieさんから話に聞いていた私は、初めてお会いしたときには、憧れの有名人に会ったような気持ちになったものです。以来、Rieさんのチジックのお家を訪ねるたびに、ツイードのジャケットを着て、冷蔵庫の脇の椅子に腰を下ろして、にこやかに「フォフォフォフォ」と私たちの会話に参加していたGeorge。そんな姿を昨日のことのように思い出します。
一番印象に残っているのは、英国人だったら誰もが名前を知っている、某建設会社の会長さんの持つ私設鉄道博物館に取材に行ったときのこと。
その私設博物館は、Sirの称号を持つ、その会長さんのご自宅の敷地内にありました。電車で行くには非常に便の悪いところで(なんといっても、その敷地内だけでも、線路を敷けるくらい広い、ということからも公共交通機関で行くのは無理でした)、鉄道好きのじいさん(Rieさんと周りのみんなは、Georgeのことを愛をこめてこう呼んでいた)に、取材のドライバーをお願いしたことがあったのです。
当時85歳だったじいさんは、バリバリ往復3時間のドライビングをこなし、我々の取材にばっちりつきあってくれました。先方のSirからしてみたら、日本の雑誌の取材で来たライターとカメラマンが、なぜか英国人の老人を伴って来たので、びっくりしたかもしれませんが…。ふだんめったに外食をしないと聞いていたじいさんと、この日取材の帰りに、パブで一緒に食事をできたのは、とてもいい思い出です。
Rieさんの撮りためたじいさんの写真は、被写体への愛と、Rieさんの目を通したじいさんのオモシロイ一面が、その画面の天地左右いっぱいいっぱいに溢れていて、大好きな作品ばかりです。Rieさんが、麻布でじいさんの写真を集めたエキシビションをしたときには、私自身は帰国がかなわず行けなかったのですが、私の母や弟夫婦までお邪魔して、ファミリーでじいさんの魅力にとりつかれてしまいました。
いつか追加撮影もして、私がじいさんにインタビューをして、本にしたいね、ってずっと話していて、つい先日も、今年できたらいいね、なんて夢語りをしていたばかりだったのですが…。
91歳。大往生だとわかっていても、きっと幸せな一生だったに違いない、とわかっていても、やはり人が今生という舞台から去っていくときは、寂しく、心細い気持ちになるものですね。この世界の鍵を、あのチジックのキッチンのテーブルの上に静かに置いて、ドアから出ていくじいさんの背中を見たような、そんな感じです。
じいさん、安らかに…。どうもありがとう。
Thank you George. You know, we all love you forever. RIP
お会いしたことはもちろん無いし、今初めてじいさんのことをここで読ませていただいたのですが、涙が止まりません。なんでかな. . . 。
返信削除ご冥福を心からお祈り申し上げます。
どうもありがとう。今日、ものすごくたくさんの方が、このブログを読んでくださったみたいで、本当にありがたかったです。ほかにも、会ったことないけど泣いちゃった、っていう声も。会ったことない人にまで、泣いてもらえるなんて、じいさん、やっぱりすごいな、幸せものだなって思いました。不思議な魅力のある人なんですよ。
返信削除改めて、どうもありがとうです。
KYOさん
返信削除・・ ーイギリスは良い季節になってきたことと
思います。
お礼が遅くなりましたがメディアに対するご意見を
頂き有難うございました!
当たり前かもしれませんが、人の意見はそれぞれの
“立場”によるのだということを 考えました
(実際、被災地のがれき撤去も、進捗が遅い方が
雇用も長く保たれるのでbetterである という意
見が地元の一部にあるとのことを聴きました。)
さて、本日数年ぶりに友人から 電話があり・・
George のお話を聴き、「はやく行かなくては」と
思いつつ過ごしている昨今でしたのでびっくりし
そして 年月をも感じている次第です。
ここ日本の自室(机にGeorgeとの写真があります
@ガレージ:Georgeが毎日 紅茶を飲みながら
仕事をしていたところ!)で、般若心経をよみました。
キュートな写真をMerciです。
引き続き Londonを感じるすてきなBlogを
楽しみに・・・。
Nobi
Nobiさん、ご覧いただき、コメントを残していただき、ありがとうございました。
削除本当に大往生。人に迷惑もかけず、苦しむこともなく、最後はなんの未練も残さず、さっとドアから出ていったような印象があって、その後ろ姿を思うとなんだかとても寂しいのですが…、でもジョージが見せてくれた「人生の機微とユーモアと、その後にあるペーソス」みたいなもの、時々思い出して、大事にしていきたいなと思いました。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!