25.5.12

The Queen: Art and Image @ナショナル・ポートレート・ギャラリー

Queen Elizabeth II by Dorothy Wilding (Hand-coloured by Beatrice Johnson), 1952
© William Hustler and Georgina Hustler/ National Portrait Gallery, London

Queen Elizabeth II, Queen Regent by Pietro Annigoni, 1954-5
© The Fishmongers’ Company

現在、ナショナル・ポートレート・ギャラリーで開催中の「The Queen: Art and Image」を見てきました。このエキシビションは、ポートレート・ギャラリーの入って手前側のエキシビション会場で行われています。以前にご紹介したハリウッドのポートレート展と同じ場所で、それほど広くないながらも、いつも興味深いキュレーションのエキシビションを開催しています。

さて、今回のエキシビションは、60年前のエリザベス女王の即位から今日までの、写真、絵画などのアート作品を通して、女王の社会的なイメージの変遷を時系列に追う、という企画です。

新しい女王にわき上がった50年代、プライベートの生活をテレビのドキュメンタリー番組にするなど、身近な王室をアピールしようとした60年代、反体制の潮流のなかで、セックス・ピストルズの挑発的なレコードジャケットをはじめ、非難や誹謗の対象ともなった70年代、フォークランド紛争、テロ事件、女王の寝室に侵入者が入り込む事件などがあった反面で、チャールズ皇太子とダイアナ元妃の結婚など、明暗の間をさまよった80年代、ダイアナ元妃の離婚と彼女の死、ここで声明を長らく出さなかったために、王室が非難の対象となった90年代、ゴールデンジュビリーで、イメージを挽回しようとした2000年代…。

その変遷は、女王の表情に表れていたり、はたまた大衆が王室をどのようなイメージでとらえていたかが、アート作品からくっきりとうかがえたり…と、大変興味深いエキシビションでした。

私自身が特に惹きつけられたのは、多くの写真作品です。ファッション写真やハリウッドスターをとらえた写真で有名なセシル・ビートンが撮った戴冠式のあとのポートレートなど、公式の場でのものも、もちろんとても美しいのですが、女王の義理の弟にあたるスノードン卿の撮ったファミリー・ポートレート、いとこのパトリック・リッチフィールド卿の撮った女王の自然な表情などが、またすばらしいのです。

その頃の時代背景を考えながら見ていくと、このときエリザベス女王はどういう気持ちでいたのかなぁと、思わず、庶民のくせに女王の気持ちを想像してみたり。

そもそも、エドワード8世が退位するまでは、王の弟の娘であった彼女は、次の次は自分が女王、というリアルな自覚はなかったんじゃなかろうか、と思うのです。それが、叔父の色恋沙汰のために、内気な父がむりやり王様になり、次は自分、となってしまった。

そんな背景を考えながら、父である王の訃報を聞きつけて、ケニアから戻ってきた若き王女の写真を見ると、父の死を悼む25歳の女性、というだけでは収まらないストーリーが見えてくるような気がします。

デリーで50万人の聴衆を前にした、当時35歳の女王の後ろ姿をとらえたモノクロ写真、ヨットのデッキでサングラスをかけ大口を明けて笑っている44歳の女王の写真など、心に残る作品がたくさんありました。

Equanimity  by Chris Levine (artist) and Rob Munday (holographer). Commissioned by the People of Jersey 2004. 
Lenticular print on lightbox.

The Queen and Prince Philip, The Duke of Edinburgh by Thomas Struth, 2011
National Portrait Gallery © Thomas Struth
人の顔には、その人の過ごしてきた時間や人生が表れるなぁと思うことが多いですが、このエキシビションでも、それを考えさせられました。

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The Queen: Art and Image(10月21日まで)
チケット £6.00

@ National Portrait Gallery
St Martin's Place, London WC2H 0HE
☎ 020 7306 0055


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