Queen Elizabeth II by Dorothy Wilding (Hand-coloured by Beatrice Johnson), 1952 © William Hustler and Georgina Hustler/ National Portrait Gallery, London |
Queen Elizabeth II, Queen Regent by Pietro Annigoni, 1954-5 © The Fishmongers’ Company |
現在、ナショナル・ポートレート・ギャラリーで開催中の「The Queen: Art and Image」を見てきました。このエキシビションは、ポートレート・ギャラリーの入って手前側のエキシビション会場で行われています。以前にご紹介したハリウッドのポートレート展と同じ場所で、それほど広くないながらも、いつも興味深いキュレーションのエキシビションを開催しています。
さて、今回のエキシビションは、60年前のエリザベス女王の即位から今日までの、写真、絵画などのアート作品を通して、女王の社会的なイメージの変遷を時系列に追う、という企画です。
新しい女王にわき上がった50年代、プライベートの生活をテレビのドキュメンタリー番組にするなど、身近な王室をアピールしようとした60年代、反体制の潮流のなかで、セックス・ピストルズの挑発的なレコードジャケットをはじめ、非難や誹謗の対象ともなった70年代、フォークランド紛争、テロ事件、女王の寝室に侵入者が入り込む事件などがあった反面で、チャールズ皇太子とダイアナ元妃の結婚など、明暗の間をさまよった80年代、ダイアナ元妃の離婚と彼女の死、ここで声明を長らく出さなかったために、王室が非難の対象となった90年代、ゴールデンジュビリーで、イメージを挽回しようとした2000年代…。
その変遷は、女王の表情に表れていたり、はたまた大衆が王室をどのようなイメージでとらえていたかが、アート作品からくっきりとうかがえたり…と、大変興味深いエキシビションでした。
私自身が特に惹きつけられたのは、多くの写真作品です。ファッション写真やハリウッドスターをとらえた写真で有名なセシル・ビートンが撮った戴冠式のあとのポートレートなど、公式の場でのものも、もちろんとても美しいのですが、女王の義理の弟にあたるスノードン卿の撮ったファミリー・ポートレート、いとこのパトリック・リッチフィールド卿の撮った女王の自然な表情などが、またすばらしいのです。
その頃の時代背景を考えながら見ていくと、このときエリザベス女王はどういう気持ちでいたのかなぁと、思わず、庶民のくせに女王の気持ちを想像してみたり。
そもそも、エドワード8世が退位するまでは、王の弟の娘であった彼女は、次の次は自分が女王、というリアルな自覚はなかったんじゃなかろうか、と思うのです。それが、叔父の色恋沙汰のために、内気な父がむりやり王様になり、次は自分、となってしまった。
そんな背景を考えながら、父である王の訃報を聞きつけて、ケニアから戻ってきた若き王女の写真を見ると、父の死を悼む25歳の女性、というだけでは収まらないストーリーが見えてくるような気がします。
デリーで50万人の聴衆を前にした、当時35歳の女王の後ろ姿をとらえたモノクロ写真、ヨットのデッキでサングラスをかけ大口を明けて笑っている44歳の女王の写真など、心に残る作品がたくさんありました。
Equanimity by Chris Levine (artist) and Rob Munday (holographer). Commissioned by the People of Jersey 2004. Lenticular print on lightbox. |
The Queen and Prince Philip, The Duke of Edinburgh by Thomas Struth, 2011 National Portrait Gallery © Thomas Struth |
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The Queen: Art and Image(10月21日まで)
チケット £6.00
@ National Portrait Gallery
St Martin's Place, London WC2H 0HE
☎ 020 7306 0055
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