12.6.12

トルコのチャイの穴。


今回も、前回に引き続き、トルコからお届けします。

余震はまだ続いているようですが(昼間外に出ているため、揺れを感じることもなく、体感するのは、夜ホテル帰ってから1、2回のみ)、無事に元気に休暇を楽しんでいます。まったくもって、この世の中はインシャッラーです。

さて、今回の旅では、ひとつだけ絶対に解き明かそうと思っていた課題がありました。

それは、トルコの「お茶のシステム」です。

本題に入る前に、一応、トルコのお茶事情について、簡単にご紹介しますね。

トルコのお茶というと、粉末のアップルティーを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、あれは、観光客向けのもので、トルコ人にとっては決して毎日の飲み物ではありません。

トルコのチャイ(お茶)は、細かい茶葉(ブラックティー)を煮出して抽出し、お湯で薄めて飲むのが一般的。ミルクやレモンは入れずに、お砂糖だけをいれていただきます。

いまでこそ、チャイ人口がコーヒー人口を追い越したトルコですが、その歴史はそれほど長くありません。1960年代までは、トルコ産の茶葉がほとんどなく、輸入に頼っている状態だったため、チャイは上流階級のための飲み物でしたが、その後黒海地方で大量に栽培されるようになり、一気に一般的になったとのこと。かつてコーヒーハウスだった場所が次々ティーハウスに姿を変えていったとか。

イスラム圏の国だけに、ティーハウスは、さながらジェントルマンクラブのように、口ひげをたくわえた(ない人もいるけど…)男性たちの社交場になっていますが、ティーガーデンには家族連れや女性同士でお茶を楽しむ姿が見かけられます。

さて、ここからが本題です。

イスタンブールにしても、海辺のリゾート地にしても、トレーの上にお茶を載せて、デリバリする男性の姿(男性が圧倒的に多いのです)を見かけます。

この彼はカップの回収の最中ですが、こんな感じです。

このティーボーイ(年配の方もいらっしゃいますが、便宜上ティーボーイと呼びます)、一般のショップでも理髪店でも、接客のあとに「お茶でもいかが?」と聞かれたかと思ったら、どこからともなく現れ、お茶をサーブしていきます。トルコのお茶は煮出し式で、いれるのが意外と手間なので、レストランやバーでも、お茶だけは「外注」していることもあり、その場合もやはりどこからともなく、ティーボーイがやってくるのです。

いったいどこから来て、どこに消えていくのか、いったいどのように呼ばれてやってくるのか、これは私にとって、ここ10年来の謎でした。「コンクリートの壁に小さな穴があって、そのなかにはお茶を作るだけの設備があり、その穴からやってくる」とまことしやかに言う人がいましたが(うちの夫です)、実際自分の目で確かめなければ、と鼻息も荒く。

さて、今回、たまたま入ったバーのスタッフの方に、その話をしたら、自分の店と契約しているお茶屋さんに連れて行ってあげる、とその場で突撃取材に成功!

まず、オーダーのシステムですが、商店街をよぉーく観察すると、こんなインターホンがところどころにあるのです。

ランプの下にある赤いボタンがチャイのオーダーのためのインターホンです。
このインターホン、契約しているティーハウスとつながっていて、オーダーするとすぐに、ティーボーイが現れる、とそういういことらしいのです。

ではいよいよ、チャイの穴に突撃。


お店とお店の間のせっまーい隙間。これがチャイの穴への入り口です。
 この隙間を進んでいくと、ありました! チャイの穴が!

これがチャイの穴!
なかはこんな感じです。

ほんとに狭いところでお茶をつくっています。
  お茶のマシンはこんなふうになっています。

上に載っかっているのがお茶の入ったポットで、下の蛇口からは熱湯が出てきます。

で、グラスにこのお茶とお湯を入れて、濃さを調整すんだよー、と実演中。

あまりの手際のよさにカメラが追いつかない!

ささささっ、と入れて、はいできあがり。

いれるのは数秒。デリバリが早いわけですね。
そして、このようなトレイに載せて配達します。

このトレーをぶんまわし(笑)する技もよく見かけます。

最後の疑問は、これをどうやって、お会計してるんだろうってことでした。月極とかで、一律いくらで飲み放題とか、そういう感じなのかな、と思っていたら、「そこからは僕が説明してあげよう」とチャイの穴に連れてきてくれたバースタッフの方。

バーに戻って、彼が取り出してきたのは、色とりどりのチップです。

まるでお菓子のようなチップが。

オレンジが紅茶1杯、紫が5杯、みたいに決まっていて、飲み終わったグラスのソーサーに入れておくと、グラスと一緒にそのチップもティーボーイが回収していくのだそうです。そして一定期間の集計ののちに、そのチップの枚数分の料金を支払い、またまた同じ代価分のチップを返してくれる、というシステムらしいのです。なんて、クレバー!

長年のチャイの謎が解けて、すっきり! ご協力いただいたバーの方、チャイの穴のご主人、ご協力いただき、ありがとうございました。

トルコにいらっしゃることがあったら、チャイの裏には、チャイの穴あり、ということをちらっと思い出していただけたら嬉しい限りです。


2 件のコメント:

  1. 興味深い記事、ありがとうございます!
    ずっと昔にイスタンブールに行った時に買った
    このチャイグラスとお皿が
    母のところに置きっぱなしにしている段ボールに
    まだあるはずなのを、突然思い出しました。
    あー、またトルコに行きたいです!

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  2. mamiさん、コメントを残してくださって、ありがとうございますーーーっ!
    チャイグラスって、ほんとうに絵になる美しさ、ですよね? 私も欲しいなぁと思いつつ、結局は毎回買わずに帰ってきます。

    ぜひぜひ、ご実家から取り寄せて、ロンドンでのトルコのチャイタイム、ご一緒させてください♡

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