18.8.12

ブリストル・バルーン・フェスタ(その1)
(Bristol International Balloon Fiesta)

オリンピックが終わり、通常営業に戻った(はずの)ロンドン。開催前から開催期間中にかけての「ロンドンでオリンピック!」という現実感のなさと同じくらい、「オリンピックが終わってしまった!」という現実感がなく、まだふわふわと、去っていくオリンピック・モードのしっぽをつかまえようとしているような、そんな不思議な空気が漂っています。

そこにあるのが当然になっていた、セント・パンクラス駅の五輪が、一夜にして消えてしまったことに衝撃を受けたり…。「ポスト・オリンピック・シンドローム」とでもいいましょうか。

…とはいいながら、今回はちょっと時間を遡って、まだオリンピック開催期間中の8月9日〜12日の週末に行われた「Bristol International Balloon Fiesta」について書きたいと思います。

毎年ブリストルで行われるこのイベントは、4日間で100以上の気球が上がり、50万人の観客を集める、欧州一の気球のお祭りです。今回、幸運にもこのイベントを訪れるロンドンからのプレスツアーに乗せていただけることになり、生まれて初めての気球体験をさせてもらえることになりました。

まず、初日にあたる8月9日(木)にブリストル空港から、ヘリコプターで会場へ。

このヘリコプターに乗り込みます。

実は取材でヘリコプターに乗せていただくのは、今回が2度目なのですが、機上から自分で写真を撮るのはこれが初めて。機内に吹き荒れるものすごい突風に、髪はぼさぼさ、カーディガンの前ははだけ、5分でお腹を冷やしてしまいそうな、そしてなにより、ちゃんとカメラを構えることができません。

ガラスのこちら側から撮っているときはまだいいのです。

かなりの枚数を撮ったつもりなのですが、見事にぜんぶブレブレ。以前に一緒にヘリコプターに乗って写真を撮ってくださったカメラマンさんはやはりプロだなぁと、5年以上の時を経て、改めて尊敬の念を強くしました。

窓からレンズを出すともうブレブレ。これもブレてますが、なんとか見られる唯一の一枚がこれ…涙。

なんとか、おなかをこわすことなく到着し、さっそく会場内を探索開始!

会場には、食べ物やお土産物を売るストールや移動遊園地などもありました。

夏休み中の無料イベントだけあって、初日にもかかわらず、会場内は家族連れを中心に人で溢れています。気球の停泊場となる敷地の中心部分は関係者とプレスのみで、一般の観客は、この停泊場をぐるりと取り囲む芝生部分でピクニックをしたり、ストールをひやかしたり。

私はというと、次々と立ち上がっていく気球の間を縫って、このイベントのために全力を傾ける方々のひたむきな表情に打たれながら、写真を撮って歩きました。

Mr Peanutの気球。こういう変わったかたちをした気球は飛行が難しいのだそうです。

必死に写真を撮っていたのは私だけではありません。こんな立派なカメラを持った少年も、気球に向かってファインダーをのぞいていました。

おじいちゃんと一緒に来ていたカメラ少年。立派なカメラを使いこなしていました。

さて、会場のはしのほうで、すでに上がらんばかりになっている、ちょっとボロッとした気球が。その気球を操っているかなりご年配の男性に、ローカル局と思われるテレビのレポーターさんがインタビューしています。そこで私もダッシュで突撃!

ヨーロッパ近代気球の父、ドン・キャメロンさんです。

このあと、ラッキーなことにメディアセンターでお話をうかがうことができたのですが、この方が、現在の熱気球の技術をアメリカから欧州にもってきた、ヨーロッパ近代気球の父、ドン・キャメロンさんです。そして、このブリストルでの気球祭りをはじめた張本人でもあります。

もともとは、飛行機のエンジニアをされていたキャメロンさん、1967年に、初めて欧州で近代気球で飛行し、その後気球を製造する会社を興しました。現在でも世界中にキャメロンさんの会社で製造した熱気球が輸出されています。70歳を超えたいまでも、月に一度は自分で飛行している、根っからの気球好き。先ほどフィールドで乗っていたちょっとボロッとした気球は、実は、キャメロンさんが1967年に最初に飛行した、記念すべきヨーロッパ第一号の気球だったのです。

「気球っていうのは、飛行機と時間の感覚が違うんですよ。下にいる人と会話しながら上がっていけるなんて、飛行機じゃ考えられないでしょう」

飛行機業界に身をおいていた人ならではの比較論は、とても興味深かったです。

さて、もうおひと方、気球飛行士の方からお話をうかがうことができました。女性飛行士のジョー・ベイリーさんです。一度乗客として気球に乗ったときからその魅力にとりつかれ、飛行免許を取り、同じく飛行士であるご主人と一緒に気球飛行を企画、オーガナイズする会社を運営されているそうです。

女性飛行士のジョー・ベイリーさん。

「気球はどんな年齢の方でも楽しめるんですよ。通常気球のバスケットのなかでは立ちっぱなしですが、最近では、車椅子の方にも体験していただけるように、なかで座っていられる設備の整った気球もあるんです」とベイリーさん。気球での空の旅を、本当に大勢の方に体験していただきたい、と強調します。

このおふたりのお話をうかがって、ますます翌朝の飛行に期待がふくらみました。

しかしその前に、この日の夜にも大きなイベントがあったのでした。「ベスト・オブ・ブリティッシュ ナイト・グロー」と名付けられたイベントで、敷地内で30ほどの気球を立ち上がらせ、音楽に合わせてあかりをともす、というもの。

……ここで、かなり個人的な話になりますが、とはいいながら、これを読んでくださっている日本人の方なら、きっと私の気持ちを分かってくださると思うのですが、ちょうどこのイベントを待っている間、オリンピックでは女子サッカー、なでしこ対アメリカの決勝戦が行われているところでした。メディアセンターにテレビはあったのですが、こちら、チームGB(イギリス・チーム)を中心とするものばかり映していて、サッカーの「サ」の字もありません。

サッカーのことを考えると気もそぞろで、フラフラとメディア・センターを抜け出し、どこかでストリーミングでもなんでも、サッカーが見られないかと、一般客でごったがえす出店や移動遊園地のあたりをうろうろ。iPhoneは3Gが入らず、またポケットwifiも圏外になっていて、Twitterのカタツムリよりもスローな読み込みにイライラしながら「2-0で負けてる」という情報を得ました。

悲しみのメリーゴーランド…。いや、乗りませんけど。見てるだけですけど。涙目で。

もうすぐ「ナイト・グロー」が始まる、というので、涙目になりながら、フラフラとメディアセンターに戻る直前に日本が1点返した、という情報。「神さま、私にサッカーを見せてください」という祈りも虚しく、相変わらず3Gは入らず。

ちょうどメディアセンターにたどり着く頃に、スタジアムでは終了のホイッスルが鳴ったらしく、なでしこの銀メダルが決まったようで、その場でぶっ倒れんばかりだったのですが……このナイト・グローというイベントがあまりにすばらしくて。

「2012年のオリンピック開催地はロンドンです」という感動的なアナウンスから始まって、音楽に合わせて、気球のあかりがついたり消えたり。

あまりに美しい光のショーに涙もどこかへ。

このイベントを支える方々の表情にも、気球のあかりがうつって美しかったです。

なでしこは負けてしまったけれど、それでも銀メダル。そういえば、メリーゴーランドって、英語で書くなら「Merry Go Round」。喜びはまわって返ってくる、っていう意味なんだよなぁ、と、ぼーっと考えました。すばらしい、メリーゴーランド。誰が名づけたか知らないですけど、本当に幸福な人には思いつかない名前です。

(イギリスにしては)立派な花火だったと思います。

最後の締めは、花火で。なでしこは最後までがんばった(見てなかったけど、きっとそう)。私も朝がんばって起きて、気球の写真をいっぱい撮ろうと心に誓いました。

ということで、気球飛行については、この次で。あともう少しだけおつきあいください。












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