11.6.12

カヤコイでの出来事。

アラビア語に、「Inshallah(インシャッラー)」という表現があります。

文字通りに訳すなら、「アッラーの神が、望むのであれば」という意味です。最近では英英辞典に載るくらい、英語圏の国でも聞く言葉になりました。

このインシャッラーに合わせて、マーレシ(Never mind)、ブホラン(Tomorrow)で、アラビア語の「IBM」と揶揄されるくらい、言い訳に使われる言葉でもあります。

私はイスラム教徒でもなんでもないですが、このインシャッラーには、ひとつの救いがあるなぁと思うことがあります。どんなに努力しても自分の思い通りにならないことは、世の中にはたくさんあるんですよね。がんばった、努力した、でもできなかった、力が及ばなかった、というときに、自分を悔恨の念から解放する言葉でもあるのかな、と。

考えてみたら、がんばればなんでもできる、という発想自体が、欺瞞であり、とてつもないエゴなんですよね。若いときには気づかなかったけれど。

と、長い前置きになりましたが、実はいま、トルコのフェティエという海辺の町に休暇できています。

今日は、フェティエからバスで30分ほど揺られた、カヤコイに行ってきました。
(それぞれの写真をクリックすると大きめの画像がご覧いただけます)


カヤコイはこんな感じで、丘の上に、1600年代にあったギリシャの町の遺跡が残っていて、小さなお土産物屋さんとカフェが5、6軒あるだけの、小さな村です。

で、もちろん、この遺跡を見ようと、ここまで来たわけなのですが、バスから降りたとたんに、ゴォォォという地鳴りがして、「キャーー」という悲鳴があちこちから上がって、村の人が一斉に家からでてきたのです。


地鳴りと悲鳴と、人々の慌てぶりの方にビックリしてしまったのですが、かなり大きい地震だったのです(マグニチュード6.1だったそうです)。
 
女性たちも心配顔。
一瞬迷ったものの、1600年代から残っている遺跡なんだから、実はすごい頑丈なんじゃないかとか、楽観的なことを考えて、チケットを買おうとたら、係の方に今日はやめたほうがいい、と止められました。なんと、さきほどバスで通り過ぎたホテルが崩れた(どの程度崩れたのかは疑問ですが)とか、フェティエの町もかなり被害が出ているとか、地元の人々が口々に携帯で仕入れた情報を交換しています。

村人たちは、みんな集まって、なかなか動く気配がありませんが、せっかくここまで来たのだから、ちょっとおみやげ物屋さんの屋台くらいのぞいてみることに。

すると、いままで集っていた女性の一人が、いそいそと戻ってきて、ネックレスはどう? ブレスレットはどう? とすすめてきます。うーん、アクセサリーは特に欲しくはないけれど…と思っていたら、小さなナザール・ボンジュク(トルコのお守りで「悪魔の目」という意味の魔除け)のついたブレスレットを「ノーマネー、ラック」と言いながら(たぶんお金はいらないけど、幸運を運んでくれるお守りに、と言いたかったのだと思います)、私の腕につけてくれました。

ただでもらいっぱなしで、じゃあ、さようなら、というわけにもいかず、いずれにしても小さな小銭入れが必要だったので、5リラは高いなぁと思いつつ、でも写真も撮らせてもらいたいし、と思い、値切ることもなくおとなしく5リラを払って、そこにあった小銭入れを買い、大手を振って写真を撮らせていただくことに。


特に自分のものにしたいとは思わないけれど、絵になるものはいっぱいあるのです。



おなじみのボンジュクもいっぱい。






もちろん、じゅうたんもあります。

たぶん、遺跡から発掘されたと思われるものも。
おみやげもの屋さんファミリー。ひとりは電話中です。

ひととおり、おみやげもの屋さんの写真も撮ったし、遺跡には入れないし、どうしようかなーとうろうろしていたら、先ほどのおみやげもの屋さんの裏がカフェになっていて、さきほどのファミリーがテーブルを囲んでお茶をしていました。

向こうも、きっと「さっきのゴリラ(5リラ)の子だわ」と思ったようで、「オーケイ?」と声をかけてきてくれて、「お茶はどう?」と誘ってくれたので、お言葉に甘えることに。

カフェの壁の一部は、1600年代にギリシャ人が建てた建物をそのまま使っています。

ファミリーのテーブルに混ぜていただきました。


お茶だけじゃなくて、フルーツもビスケットも。5リラ高い、なんて思ってごめんなさい!
娘さんは、携帯を片時もはなさず、クラスメイトの安否を確認している様子。とても心配そうです。娘さんはこの年配の女性を「おばさん」と呼んでいたので、どういう家族構成かは定かではありませんが、一見、仲の良いご夫婦と娘さんの3人家族のように見受けられます。

この村に来る途中でなにやら、ここは熱海かブラックプールか、でも山のなかにあるとはこれいかに?という過剰に観光地化した村(オボジュクとヒサラヌという村です)を通り過ぎてきて、どうしてそういうことになってしまったのか、とか、お茶を囲んで、この一帯の事情やら、娘さんがプログラマーになる勉強をして公務員になりたいとか、そんなお話をうかがったり。

グリンピースの缶で育っているのはミント。虫除けにいいんだよーとご主人。
このカフェがご自宅にもなっているらしいのですが、お母さん(おばさん?)の趣味がよいのでしょうね。かわいいものがいっぱいで、ひとり盛り上がって撮影セッションさせていただきました。

いろんなハーブを栽培されているのですが、並べ方とかかわいいんです。
トルココーヒーをつくるのには必需品の専用のおなべ(って呼んでいいのでしょうか)。
棚もカップも素朴であたたかい。
カフェのキッチンは本当に簡素。ここでコーヒーやお茶をいれてくれます。
こちらも小さなハーブガーデン。
このドアから先がご自宅のようです。
と、こちらにお住まいなのは、実は、この三人だけじゃなくて……。

外の流し台の下に、小さなファミリーを発見!
生後2日のヒヨコちゃんたちだそうです。
右側がカフェとご自宅。ニワトリ一家も好き放題、遊びまわってます。

人が食べ物を食べていると、期待を込めたまなざしで居ずまいを正す彼女。

そして、丘の上のほうから、ガラガラガラというベルの音が聞こえてきたと思ったら、羊の一群が戻ってきました。

お母さんからお水をもらってます。

羊が戻ってきたのを合図に、そろそろおいとましなければ、と立ち上がったら、お母さんが、レース編みを持ってきて、好きなのを持っていっていいわよ、と…。

お母さんの手がオレンジなのは、たぶん、ヘナを使ってなにかをされていると想像。

これをひとつ作るのが、どれだけ大変か、クラフト好きの私にはわかります。お気持ちだけありがたくいただくことにして、写真を撮らせていただきました。

帰りは、近くにあったタクシー会社さんから、ホテルへ一路。運転手のおじいちゃんがとってもすてきだったので、お願いしてパチリ。
すてきな笑顔をいただきました。
この運転手さん、金髪で、青い目。トルコって、本当に東洋と西洋の境目なんだなぁって思わせるさまざまな容姿の人たちが混在しています。

と、予定どおりにはいかなかったけど、実り多い一日でした。
 
本当は休暇が終わってから、ゆっくり写真の整理をして、頭の中をまとめて、ブログにアップしようって思ったのですが、いまもときどき余震が続いていて、それこそ、インシャッラー。お母さんにブログで紹介するね、って約束したので、やっぱり今日書いておこうと思い直した次第です。

今日は、なんとなく信心深くなって、お母さんに結んでいただいたボンジュクをつけたまま、寝ようと思います。


長々おつきあいくださって、読んでくださって、感謝です。

<お母さんのお店&カフェ>
Halil ibrahim Ekiz
Koya Koyu, Fethiye
Tel: 0252-618-03-13

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