22.5.14

時計が戻ってきた。(その2)


無事帰宅。

一般的な価値とは無関係に、なんらかの思い出のある品物など、自分だけにとっての価値を英語では「センチメンタル・バリュー」ということがあります。

以前にも書いたことがありましたが、ここ20年以上身に着けている腕時計は、私にとっては、まさにセンチメンタル・バリューのある愛用品。

この時計が手首から消えていることに気づいたのは、1週間のスコットランド出張の帰り道、飛行機がエディンバラから離陸しようとしている、そのときでした。

いったい、どこにいってしまったのだろう、とグルグル頭のなかで考えて、それほど時間もかからずすぐに、空港のセキュリティゾーンで時計を外してトレーにいれた記憶がピコーンと頭によみがえってきました。そしてそれを手首に戻した記憶がないことも。

あああ、どうしよう、と気づいたときには、すでに飛行機は滑走路を滑り出していました。時計を空港に置き去りにして、自分だけロンドンに帰るという状況は、なんともいえずいやーなもので、たぶんもう、あの時計は戻ってこないだろうなぁと、えらく感傷的になって落ち込んだ帰路でした。

さて、ロンドンに戻ってきてすぐに、とりあえず、エディンバラ空港の遺失物担当の窓口に、メールを送りました。前回ブログに載せたときに撮った写真があったので、それも添付して、セキュリティゾーンに置き忘れたことを書いたら、わずか数時間のうちに、「見つかりました」のお知らせとリファレンス番号が。

その後、遺失物担当の方が、私のメールアドレスを間違えたりというハプニングもあり、思ったよりもちょっと時間がかかりましたが、今朝、10日ぶりに私の手元に時計が戻ってきました。

この10日間のあいだに、日本で仕事をしていたときに大変お世話になった方の訃報を聞き、たまたまなのですが、その方がこれと同じ時計をしていたことをぼんやりと思い出しました(その方がされていたのは紳士用でしたが)。

センチメンタルバリューというのは、こうやって静かに雪が積もるみたいに重なって、いつか自分だけにわかる(自分だけにしかわからない)特別な意味をこしらえてしまうものなのかもしれません。


ホテルの窓からは、エディンバラ城が見えました。

羊の出産シーズンだけに、シェットランドでは飛び回る子羊と母さん羊の姿がいっぱいでした。







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