「一生に一度だけ…」という言葉に弱いのは、おそらく私だけではないですよね。
現在、ナショナル・ギャラリーで開催中の「ダヴィンチ展」は、「Once-in-a-lifetime exhibition」とうたっているのです。というのも、ダヴィンチがミラノの宮廷画家をしていた1480年代から1490年代の彼の作品を、ほぼすべて網羅している、いまだかつてない作品展だから、だそうです。
私自身は、美術に取り立てて詳しいわけではないので、ここで作品についてのうんちくを述べるのはおこがましくて、ちゃんちゃら笑ってしまうのですが、こんなド素人の私にとっても、パリのルーブル博物館が所有している「岩窟の聖母」と、ナショナル・ギャラリーが所有している「岩窟の聖母」が、ひとつの大きな部屋に、向かい合うようにして飾られている光景は感動的なものがありました。ダヴィンチ本人は、 500年以上の時を経て、このふたつの作品が、ひとつの部屋にこうして展示される日が来ることを想像したかしら…と遠い目…。
さて、今回、ナショナル・ギャラリーのご好意で、このエキシビションの開催中に限って、展示作品のいくつかを画像入りでご紹介できることになりました。日本にお住まいの方々、遠方でいらっしゃれない方々にも、少しお楽しみいただければ…と、いただいた画像をアップしてみます。
まずは、前述の世にも有名なこのふたつの作品。
Leonardo da Vinci (1452-1519) The Virgin of the Rocks, 1483 – about 1485 Oil on wood transferred to canvas 199 x 122 cm Musée du Louvre, Paris, Département des Peintures (777) © RMN / Franck Raux |
Leonardo da Vinci (1452–1519) The Virgin of the Rocks, about 1491/2–99 and 1506-8 Oil on poplar, thinned and cradled 189.5 x 120 cm © The National Gallery, London (NG 1093) |
上がルーブルに所蔵されている作品、下がナショナル・ギャラリーに所蔵されている作品です。数年前にナショナル・ギャラリーの作品をX線と赤外線で調べたところ、まったく構図の違う下絵が映しだされたことで、話題になりました。
ナショナル・ギャラリーの展示室にいらした係の方にたずねたところ、ルーブルのほうの作品が、ダヴィンチ本人の手によって先に描かれたもので、ナショナル・ギャラリーのほうは、ダヴィンチ本人に加えて、お弟子さんたちが一緒に描いたものだろう、という見方が有力なのだそうです。よーく見ると、下の絵には天使の輪があったり、またヨハネを示すための十字架の棒が加えられていたり、とわずかな違いがあります。でも、なんといっても一番大きな違いは、下の絵の光がとっても男性的でシャープだという点でしょう…と係の方はおっしゃってました。
さて、「ダヴィンチ展」は、ナショナル・ギャラリーのなかの7つの部屋を使って、開催されています。上記の「岩窟の聖母」が置かれているのは、「Room 4」です。
入り口に一番近い部屋「Room 1」は、ダヴィンチのミラノでの生活の初期に描かれた作品が展示されています。そういえば、エキシビションの無料ガイドに載っていたのですが、ダヴィンチ本人も最初は画家としてではなく、たて琴の奏者として、ミラノで注目を集めたのではないか、と書かれていました。
お次の「Room 2」は、「美と愛」をテーマに、ダヴィンチの描いた美しい女性の肖像画が並んでいます。もちろんミラノ公の愛人と妻の姿も…。
Leonardo da Vinci (1452–1519) Portrait of a Woman (‘La Belle Ferronnière’), about 1493–4 Oil on walnut 63 x 45 cm Musée du Louvre, Paris, Département des Peintures (778) © RMN / Franck Raux |
「Room 3」は、「Body and Soul」をテーマに、未完の「聖ヒエロニムス(St Jerome)」ほかの作品が展示されています。
Leonardo da Vinci (1452–1519) Saint Jerome, about 1488–90 Oil on walnut 103 x 75 cm Musei Vaticani, Vatican City (40337) © Photo Vatican Museums |
「Room 5」には、ダヴィンチのお弟子さんたちによる作品を中心に、そして「Room 6」にはフランス王の支配下となったミラノでのダヴィンチの作品が展示されています。最近発見された幻の絵画「サルバトーレ・ムンディ(救世主)」もこの部屋に。
Leonardo da Vinci (1452–1519) Christ as Salvator Mundi, about 1499 onwards Oil on walnut 65.5 x 45.1 cm Private collection © 2011 Salvator Mundi, LLC. Photo Tim Nighswander/Imaging4Art |
そしてそして。最後の部屋「Room 7」は、Room 6までがあるセンズベリー・ウィングではなく、一部屋だけ離れて、本館にありますので、ご注意を! こちらには、「最後の晩餐」関連のスケッチや絵画が展示されていて、絶対に見逃せません。もちろん「最後の晩餐」そのものは壁画なので、持ってくることはできないわけですが、壁画の写真と、さらに1520年に描かれた実物大の油絵が展示されています。
この油絵、オリジナルの壁画からは失われてしまっているキリストの足までばっちり入っています。
Giovan Pietro Rizzoli, called Giampietrino (active about 1508–1549) The Last Supper, about 1520 Oil on canvas302 x 785 cm © Royal Academy of Arts, London (03/1230) |
また、「最後の晩餐」を制作するにあたって、ダヴィンチが描いたと思われるたくさんのスケッチやアイデア画もあり、とっても興味深い…。
ダヴィンチは「美」に対する探求心と同じくらい、「醜」に対する探求心ももっていたのだそうで、以下のスケッチはそんな「醜」を描いたものなのだそうです。そしてこのスケッチは、「最後の晩餐」のユダに投影されているのだとか。ひとつ下のスケッチもユダを描くにあたって描かれたものだそうです。
そしてこちらは、「最後の晩餐」で向かってキリストのすぐ左側に座っている聖ヨハネの手のスケッチ。こうして部分的にスケッチを繰り返して、大作ができあがっていったのですね…。
もしも機会がありましたら、ぜひ足を運んでみてください。本当に一生に一度のチャンスかもしれないので…。
「Leonardo da Vinci: Painter at the Court of Milan」
(2012年2月5日まで)
The National Gallery
Trafalgar Square, London WC2N 5DN
チケット:16ポンド
※BBCのウェブサイトではもう少し大きな画像が見られます。よろしかったらこちらもどうぞ。
見てきたんだ〜、さすがKYOさん!
返信削除もう前売りはないから並ぶ覚悟で行かなきゃ見られませんよね。
竪琴の奏者だったのですか!天才はあらゆることを見事にこなしていたに違いありません。
うまく言葉にできませんが、初めてダヴィンチを見たときも、そして今日ここの作品を見ても、静かに深く響く音が聞こえます。
頑張って並ぶわ!
お友達に聞いた話なのですが、オンラインでの前売りは完売しているけれど、窓口に行けば、まだ前売りあるみたいなんですよ。
返信削除ただ、前売りも当日も同じ列みたいで、午後3時以降の当日の人がいなくなる時間に前売りを買いにいくのがいいみたいですよー。
ぜひぜひぜひ見て欲しいです、ほんと。すばらしかった。
本当に素晴らしいものが見られて良かったですね♪
返信削除わたしもいくつかは本物見たことあります。
しかし、これだけのものが揃って見られるなんて
信じられません!
ホントいいなぁ~>^_^<
GAN☆さん、読んでくださってありがとうございます。
返信削除お弟子さんの作品も入っていますが、全展示作品数93点という壮大なスケールでした。
どうも前売り券は窓口売りも、すでにすべて売り切れなのだそうです…。ほんとうにすごい人気のようです。