27.9.15

はじめてのサパークラブ。

90年代後半から、この15年から20年の間に、英国の食文化はずいぶんと様変わりしたように思います。

フランスをはじめとするヨーロッパはもとより、東洋の国々にまで修行に行った英国人シェフの台頭、ミシュランの星付きレストランも急カーブを描いて増加、それまでほんのわずかな数しかなかったお料理番組や、世間一般に顔の知られているスターシェフが、数え切れないほどに増え、一般家庭でのお料理熱も上がり、スーパーマーケットを彩る食材の種類も劇的に増え……といった具合で、「まずい英国」は、すでに過去のお話。

すっかり外食慣れした英国の人々は、さらに新しいものを求め、ここ最近の動きとしては、期間限定でテスト的にオープンするポップアップ・レストランと、ロンドン中心部に次々と生まれるストリート・フード・マーケット、そしてもうひとつ、新しい外食の形態「サパークラブ」が挙げられると思います。

「サパークラブ」とは、ご存じの方も多いかと思いますが、一般的な定義としては、「レストランではない会場で、イベント的に行われる、有料の着席型食事イベント」といった感じでしょうか。事前に予約が必要で、通りすがりで参加できる、というものではないので、どこか秘密めいた匂いがして、とても気になっていました。

そんなときに、なんと、友人ご夫婦がサパークラブを開催するとのお話。この機会を逃してなるものか、とばかりに、お知らせをいただいたその日に即日予約をしました。

会場となったのは、北ロンドン、ケンサル・ライズにあるワイン屋さん。お知らせには6時から、とあったので、6時ちょうどにお店に到着、さっそく会費を支払って、店内をぶらぶら。

今回のサパークラブは、私の友人ご夫婦ユニット「hifumi(一二三)」によるお料理5品と、それぞれのお料理に合うワインをこちらのワイン屋さんが選んで提供する、というもの。お食事とワインのセットで55ポンド、私のようにお酒を飲めない人のために、一応ワインなしお食事のみで35ポンドという価格も用意されていて、ありがたい限りです。

ワインの並ぶショップの後ろのほうには、長テーブルに20人分の席が用意されています。ディナーの前にはおつまみ的な和風カナッペがいろいろと。

前菜は、レンコンのはさみ揚げ柚胡椒、味噌や青のりビスケットとクリームチーズ、
出汁とオニオンでマリネされたプチトマト。どれもどんどん食べてしまいそうで自制心が肝心。

小規模な集まりなので、知らない同士がお酒を飲みながら、自己紹介しあったり、ワインの話をしたり、世間話をしたり、とてもリラックスした雰囲気。

7時になって、いよいよ着席。お待ちかねのワインとお料理の登場です。前述のとおり、私はお酒が飲めないので、ワインに関してご紹介できないのが残念ではありますが、お料理はこんな感じです。

(左上)冷たい出汁ゼリースープと夏野菜。すり身のお団子が美味。
(右上)崩したお豆腐のごまドレッシング和えと季節のフルーツ。
フレッシュなイチジクがお豆腐の優しい味のなかから出てきて、嬉しい驚き。
(左下)鶏の南蛮漬けと夏野菜。一番上に載っているのは、パリパリの昆布。旨みのかたまりです。
(右下)押し寿司とお新香。玉子焼きのお味が絶妙で感動的。
お寿司と一緒出された揚げなすの入った柚味噌のお味噌汁も絶品でした。

最後には、和風パンナコッタのデザートもありました。こちらもたっぷりサイズで、お腹は大満足。ほうじ茶のパンナコッタに黒蜜、抹茶のフィナンシェが添えられていました。




最後にhifumiオリジナルのワインバッグをおみやげにいただき、ちょうどお食事の前にこのワイン屋さんで買った瓶詰めのオリーブオイルを入れて帰りました。

近くに座った人たちと、たくさん興味深いお話ができて、お料理もおいしくて、お腹もいっぱいになって大満足、とてもすてきな夕べでした。

英国食文化が発達したのは、おそらく喜ばしいことなのでしょうけれども、それと同時に最近の「おしゃれ」レストランでは、すでに意味をなすのかなさないのかわからないような高級食材や、これまた意味をなすのかなさないのか疑問なくらい凝った調理法やデコレーションで、一食100ポンド、150ポンドもまったく珍しくないご時世。

自分で野菜を育てるようになって、特に思うところでもあるのですが、懲りすぎない、オネストな調理による、素直においしいお料理を、正当な値段で食べたい、という、気持ちが強まる今日この頃の私。いろんな意味で自分の身の丈に合わない、流行のレストランに挑戦するよりも、友人や自分の気になる人が丁寧につくったお料理をいただけるサパークラブを、今後も探索してみたいなー、と思っています。


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